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ホーム&ライフスタイル トレンドレポート
[第1回]新しい価値を生み出すリフォーム

「時間」が育んだ美しい街で快適に暮らす

 時間の経過が価値を高める……住環境もその一つではないでしょうか。地価高騰前に開発されたゆったりした敷地、緑溢れる街並、良質なコミュニティ。住まいに落ち着いた環境を求める人々の間で「旧分譲地に建つ住まいをリフォームして住む」方法が注目されています。東京急行電鉄㈱の「ア・ラ・イエ」は、その先駆者ともいえる存在。かつて自社が開発分譲した住宅が売却される際、買い取り保証をした上で基礎や柱などの構造は残し、断熱や耐震補強を施してフルリフォーム。同様の新築住戸に比べ建物部分が約3割安い価格で販売(仲介)しています。

 元の居住者は愛着のある家が壊されたり、敷地分割で街の景観を乱しご近所に迷惑をかけるといった心配がなくなるだけでなく、リフォームで住まいの価値を高めた上で100%の買取保証を受けることができ、確実な売却を実現できるメリットが生じます。一方、新しい購入者は良質な住環境や景観はそのままに、現代のライフスタイルにふさわしく再生された保証付き(最長10年)の建物で快適に暮らすことが可能に。双方にとってメリットが大きいこのシステムは、既存の建物を活かすことで廃棄物を減らし、環境負荷も抑えることができます。

 「例えば子育てを終えた層が便利な都市部へ引っ越したら、空いた家に新しく若いファミリー世帯がやってくる。このサイクルをつくることで新陳代謝が発生し、いつまでも街の活力を維持し続けることが可能になるのですが、その中でリフォームは大きな役割を果たせるのではと思います」(住宅計画部 プロジェクト担当 清水課長補佐)。リフォームは住まいだけでなく、街そのものの再生につながる。そんな可能性を感じる事例です。


テーマは「LOHAS×Antique」。珪藻土や無垢材などの自然素材を使用した開放感いっぱいのシックな空間(東京急行電鉄(株)「ア・ラ・イエ」分譲済住戸)

分譲中古マンション購入の新しいスタイル


独自仕様の「リノヴェックス内装」はショールームで確認することができる((株)インテリックス「リノヴェックスマンション」)

 毎年続々と販売されている新築分譲マンション。でも、数でいえば分譲中古マンションのほうが圧倒的に多いことはあまり語られていません。例えば東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3県でいえば、2008年の新築分譲マンションの販売戸数は5万戸を割る見込ですが、分譲中古マンションストックは約280万戸。立地指定で住戸を探すのなら、新築マンションの発売を待つより中古マンションを探したほうが早いかもしれしません。

 ただ、理屈ではわかっていてもどうやって探せばいいのか分からないし、間取りも古臭くて前の入居者の生活感が気になる、かといって自分でリフォームをするのも大変そう…。そんな声を受け、最近は中古分譲マンション(専有部内)の古くなった内装・設備、間取りを現代のライフスタイルにあわせ再生させて販売する、いわゆる「リノベーション(再生・再構築)マンション」が注目されています。

 「”頑張って新築マンションを購入する”のではなく、安くて良質な中古マンションを購入して余裕を持ってライフスタイルを楽しもうとする方が増えていますね」(リノヴェックス企画部広報グループ 関山さん)と話すのは、中古マンション再生流通大手の㈱インテリックス。同社は、リノベーションした住戸にアフターサービス保証をつけ「リノヴェックスマンション」として販売しています。購入者は成熟した視点と価値観を持つ中高年夫婦を中心に、都市で積極的にシングルライフを楽しむ人、郊外の一軒家を売却して都心部に移り住む人など多岐にわたるとのこと。20代の若い購入者が増えているのも特徴で、中古マンションをイメージで捉えるのではなく、使用価値の観点で冷静に判断した上で購入しているようです。ただし通常の中古マンションを購入する際と同じように、建物全体の築年数や構造、管理状態など、新しくなった内装や設備以外のチェックは欠かせません。なるべくプロの視点でチェックされたものや、保証の付いた住戸を選びたいところです。

建築士資格を持つ女性リフォームプランナーによるプロの提案


蔵書9000冊を「見せる収納」に転換したカフェのようなモダン空間にリフォーム(三井ホームリモデリング(株)「三井のリフォーム」)








取材協力
東京急行電鉄株式会社  http://www.a-la-ie.com
株式会社インテリックス  http://www.intellex.co.jp
三井ホームリモデリング株式会社  http://www.mitsui-reform.com

 これまでご紹介したのは、「立地や環境などの価値を活かし、リフォーム済み住戸を購入する」事例。では、今住んでいるところや中古マンションをライフスタイルや自分の好みに合わせて自由にリフォームしたい場合、どのようなことに気をつければいいのでしょうか。一番多いのは「漠然としたイメージはあるけど、具体的にひとつひとつ決められない」ケース。インテリアコーディネートなどデザインに関することももちろんですが、もっと大変なのがさまざまな仕様の中から自分の好みにあう組み合わせを選びつつ、きちんと予算内に収めるテクニックです。

 この解決法として、女性建築士によるプランナーシステムを20年以上前から導入しているのが、「三井のリフォーム」で知られる三井ホームリモデリング㈱。「始めた当初は設備などのメンテナンス中心のリフォームが多かったのですが、ご自身のスタイルを反映させたリフォーム需要も年々増えています。ライブラリー(図書室)のある家や茶室のある家など、個性溢れるスケルトンリフォーム(全面改装)も数多く手がけています」(東京ミッドタウン営業所長 池田取締役)。また、最近は郊外に広い住まいを持つ親世帯と都市部にマンションを持つ子世帯で住まいを交換する例も増えているとのこと。家族構成に合わせて間取りを大幅に変更するときなどは、経験を積んだプロのアドバイスが役立ちそうです。

 一方で、限られた予算内で全体をリフォームしたい人には、リフォーム価格が㎡当たりの定価になっている”定価制リフォーム”という手も。同社の場合、テイスト別にあらかじめ用意された内装仕上げや設備機器等の中から好みを選び、間取りは自由にプランニングすることができます。フルオーダーリフォームが自分の好みを追求してメリハリのあるお金のかけ方ができるのに比べ、こちらはコストとスピードを重視して全体的に部屋を新しくしたい人に向いています。

■取材ノートより
 さまざまなスタイルのリフォームが注目される背景には、スクラップ&ビルドの時代から長寿命住宅へといった社会的な意識の転換があります。一方で、社会が成熟するにつれ生活感度の高い人々が「新しい・古い」以外の価値基準(例えば「心地よい」「楽しい」「安心する」など)を求めるということも影響しています。価値観が多様化する中、さまざまな可能性を示してくれるリフォームが今後どのような新しい魅力、提案を示してくれるのか、注目していきたいと思います。


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