2014年12月03日更新
三角タワーのポテンシャル
第2回:キャピタルマークタワー
<ハード面の特徴>
キャピタルマークタワーの見た目のわかりやすい特徴である三角形状の外観デザインにはもちろん理由があります。湾岸物件は芝浦アイランドのようにエリア一帯を再開発するケースも多いですが、本物件は四方に既存建築がある土地にあとから建ったため、お互いの影響を無視できません。ひとつの解決策として、三角形状としたうえで5000㎡の公開空地により建物間の正対を避け、圧迫感を減らしています。
二番目の特徴は、こちらは見えませんが免震でしょう。さきの震災前で免震マンションがまだ少ない時期、当時最高層の47階建て免震に「ウィンカー工法」という新工法を投入する、鹿島建設施工ならではのアプローチにより誕生しました。基本的に埋立地でもある湾岸物件によくあるイメージとして、私も聞かれた「地盤、大丈夫ですか?」があります。もちろん、いずれの物件も東京礫層まで杭を打つため構造上の問題はないのですが、芝浦港南はこれが比較的浅く、キャピタルマークタワーはN値60に達する地下15.8mより深い位置まで杭を打ち込んでいます。当時すでに十勝沖地震で発生した長周期震動による共振が注目されていたため、免震を採用するにあたり地盤は重要です。
免震のセールストークは十分理解していましたが、体感する機会は入居3年後の東日本大震災により想定外に早くやってきました。当日、私は同じく地盤の堅固な埋め立て地である横浜みなとみらいの免震オフィスにいたため、ゆっくりした揺れが続くのは経験しました。夜半になんとか帰宅すると、エレベーターは復旧していて、自室は収納の耐震ラッチが下りていた以外に地震の痕跡はみられませんでした。もちろん、マンション全体では免震装置が一定量動いたことは観測されていますが、大きな被害はなかったと聞いています。震災後、管理組合では備蓄の強化など地震を意識した取り組みが積極的になされています。
免震とあわせて販売時にアピールされた、あとから変えられない特徴はオール電化です。震災後、採用される比率は減っているようですが、私自身は共働きで日中不在なこともあり、電気代値上がりの現状でもじゅうぶん安いと感じています。ただし、都心部では計画停電が実施されず、ネガティブな記憶の要素が少なかった面もあるでしょう。
間取りは、柱や梁が出にくい「ダブルチューブ架構」により、ワイドスパン化と設計の自由度および可変性を両立しています。通常は将来の自由度に貢献する可変性ですが、私は新築入居前に壁撤去をともなうリノベーションを実施したため、間取り変更の制約が本当に少ないことを実感しています。以上の特徴は、2008年「グッドデザイン賞」と、翌年の港区「みどりの街づくり賞」受賞の理由にも含まれ、一定の客観的評価をいただいています。
<共用施設利用状況>
予約が必要な有料共用施設でもっとも人気が高いのは、ジャグジーなどを有する25Fのゲストルームです。総戸数869戸に2部屋のため、いまだ平日もほぼ予約で埋まっています。管理組合として、入居当時3000円だった1泊料金を4500円に値上げしましたが、あまり状況に変化はないようです。2Fに大小2つあるキッチンつきパーティールームも、週末を中心に活用されているようです。プロジェクターやカラオケ設備をもつAVシアターもあり、子連れでストレス発散に活用している例を聞いています。
予約不要・無料の施設としては、キッズルーム、フィットネスジムに加え、有人のバーを備える2層吹き抜けの展望ラウンジ「キャピタルスカイラウンジ」が24Fにあります(写真)。ゲストルームと同じく北側の開けた方角にあるため、東京タワーを中心とする都心のランドスケープに、入居後さらに東京スカイツリーが加わりました。これらの施設は利用する層に偏りがあるため、議論になりがちです。実は私も入居前は有人バーに関し固定費の懸念があり否定的な立場でした。入居後、第1回で書いたオフ会仲間と気軽に飲んだり、より素晴らしいブリリアマーレ有明のバーにお邪魔した経験から、マンション価値の維持向上に貢献している、と考えが変わりました。
別視点の施設として、東京都認証保育所(ポピンズナーサリースクール芝浦)が2Fに入居しています。認証のため住民に優先権はありませんが、住民専用の入り口が屋内にあります。管理組合の視点からは、住民専用でないぶん、安定したテナント料が期待できます。
<管理組合による改善>
管理組合が取り組んだ改善のうち、象徴的なものはミニショップの廃止です。入居時に存在したミニショップは、「焼き立てパン」などを楽しみにしていた方もいましたが、実態はどうやっても赤字で損失を管理組合、すなわち住民が補てんする契約でした。これを是正するため、定期総会にミニショップの廃止と自販機による無人店舗化が提起されたものの、否決となりました。次年度の理事会が、この住民意思を考慮してあらためてコンビニの誘致を本格検討し、結果としてセブンイレブンから出店可能との判断を受けました。定期総会から5か月後の臨時総会で早くも可決され、私が調べた限り日本初の住民専用セブンイレブンとなりました。ちょうど施設内店舗が増えてきた時期で機が熟した面はありますが、理事会の皆さんの熱意には頭が下がるばかりです。さらに、誘致しただけにとどまらず、バーと従業員や商品供給など運営を一体化し、固定費のさらなる低減も怠っていません。採算性からマンション内コンビニが撤退する事例も聞くなか、継続の仕組み確立は大事だと感じます。
直近では、大規模修繕を意識する年次となった今年の定期総会にて修繕積立金の改定が提起され、段階改定+一時金方式から、短期的には金額アップをともなう均等積立方式への移行が可決されました。これ以外に、傷が目立ってきたエレベーター内の壁・床・天井を維持しやすい素材に変更したり、空きが出てきた立体駐車場の外部貸し、電動レンタサイクルの有料化など、一般的かもしれませんが継続的な改善がはかられています。
次回は、最終回として「都心タワーに暮らして思うこと」をお伝えします。
【キャピタルマークタワー】
第1回 都心湾岸物件8年目のリアル
第2回 三角タワーのポテンシャル
第3回 都心タワーに暮らして思うこと
- <港区三田>
キャピタルマークタワー 2007年11月竣工。田町駅徒歩8分、三田駅徒歩9分で山手線新駅予定地にも程近い47階建て。当時としては特徴的な免震構造+オール電化で、周囲への圧迫感を避けつつ公開空地を確保した三角形の外観。付帯施設はバーラウンジ、ゲストルーム、住民専用セブンイレブン、ジム、認証保育所など。