2009年04月01日更新
より前向きに「マンションを選択する」時代へ
家探しは「世の中に自分の居場所を確保すること」と言い換えることができるでしょう。加えて、人は自宅の中にさえ、ホッとできる居場所を求めるものです。いくら広くて豪華な家でも、それがないと落ち着かない。ありのままの自分でいられる、自分だけの「居場所」が欲しいのだと。
話は少し飛躍しますが、住宅業界における分譲マンションの位置づけについても、ここ数年でようやく「居場所」ができた気がします。一般にマンション法とよばれる区分所有法が制定されて半世紀近く経ちますが、分譲マンションはどうしても、その画一的なプランゆえに住居としての個性が見いだせず、一時的な住まいの域を超えられないとの印象を与えていました。
私が住宅に関わる仕事をはじめた当時、分譲マンションは「仮住まい」とまではいわないまでも、将来的に買い替えることを前提とする購入が圧倒的で、肝心の住み心地という視点は長く置き去りにされていました。何よりも立地の利便性が優先され、資産価値に偏重した市場が出来上がってしまったことに、住まいのプロたちは、商材として”格下”の烙印を押しました。経験の長いベテランほど「マンションなんてねぇ…」と呟き、その後に「住宅じゃないんだよ」という続きの声が聞こえてきそうな状況だったのです。
あれから15年。今となっては「永住型マンション」という言葉さえ幾分古めかしく感じるほど状況は変わったと思うのですが、皆さんはどのように感じているでしょうか。都市生活を満喫したい、という住み手の気持ちに何とか応えたいと思う作り手が、良質な住宅を仕上げ、住宅業界内での居場所を確立したのではないかと私は考えています。このコラムでは今後、時代をリードする先進的なマンションをご紹介していこうと思います。
「元麻布ヒルズ フォレストタワー」(2002年6月竣工)は、地震時の揺れを軽減する免震構造を採用。樹木をイメージしたデザインは、監修に内井昭蔵設計建築事務所、コンラン&パートナーズ(一部)が携わる。この頃から、高級イタリアモダン家具メーカーにマンション顧客からの注文が急増したという。
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- 『家の時間』主宰
坂根康裕 リクルート『都心に住む』『住宅情報スタイル』元編集長。ブログ「高級マンション TOKYO」。All About「高級マンション」ガイドも努める。著書に『理想のマンションを選べない本当の理由』(ダイヤモンド社)
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