2010年03月17日更新
「ヴィンテージマンション」選びの注意点
単に古びた中古マンションではなく、年数が経ってこその味わいを醸し出す「ヴィンテージマンション」に今関心が高まっているようです。ヴィンテージといっても、日本のマンション自体がまだ半世紀ほどの歴史しかありませんから、対象となるのは築20~40年後半。丁度、東京オリンピック(1964年)からバブル前(1985年程度)あたりまでに建てられたマンションを指しているわけですから、正確にいえば”これからますます価値を増す未来のヴィンテージマンション”ということになるでしょうか。
では具体的にどのあたりに在るのかといえば、例えば原宿近辺。いまだ斬新なデザインとも思える「ビラシリーズ」や屋上プールを併設した「コープオリンピア」などが有名です。また、デベロッパーと呼ばれる大手不動産企業が分譲事業へ進出しはじめた場所、赤坂薬研坂辺りにも実際の築年数を感じさせない雰囲気のある物件が並んでいます。
しかし、こうした築年数の経ったマンションを居住用として買う場合にはそれなりの注意が必要です。代表的な項目を3点ほど挙げてみましょう。まず、管理・修繕が計画的に行われているかどうかです。滞りなく原資が集まり、管理組合の合意のもとに維持メンテナンスがなされているか、チェックしたいところです。次に断熱性能。窓サッシの改善策や床壁の厚みなどはしっかり理解しておかなければ、今後ますます省エネが叫ばれる中で後悔することにもなりかねません。最後に、もっとも気をつけたいのが耐震性能です。現在の建築基準法上の耐震基準を満たしていないのであれば、その対処をどのような方法で施すのか。数千万円の買い物をするわけですから、しっかり認識し、納得したうえで決断する必要があると言えるでしょう。
時が経てば間違いなく建物は古くなっていきます。一方、地面に植えられた草木同様、住んでいる人たちのコミュニティは時間の経過ととも強く育つことが理想です。斬新なデザインも、今では見慣れない凝った企画も朽ちていくかどうかは管理の仕方次第です。ヴィンテージに欠かせない条件の根っこを理解したうえで、どこに注意すれば間違ったマンション選びをしないで済むか。ぜひ整理しておきたいものです。
JR山手線「原宿」駅前の『コープオリンピア』(右)。建物からみえる並木のある風景は、ここでしか得ることのできない財産。
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- 『家の時間』主宰
坂根康裕 リクルート『都心に住む』『住宅情報スタイル』元編集長。ブログ「高級マンション TOKYO」。All About「高級マンション」ガイドも努める。著書に『理想のマンションを選べない本当の理由』(ダイヤモンド社)