2010年04月21日更新
「優良マンション」の定義に変化の兆し!?
今年も景気浮揚の起爆剤として様々な住宅取得支援策が講じられています。昨年の住宅ローン控除上限額の引き上げに加え、住宅資金の贈与税非課税枠の拡充や住宅版エコポイントの実施など、これまでにないほどそのメニューは多彩。なかでも、所得や親の資産の大小にかかわらず、購入物件が基準を満たしていれば良いとされる「【フラット35】S(優良住宅取得支援制度)の金利下げ幅拡大」のメリットはかなりのインパクトが期待できるものです。
これは当初10年間の金利下げ幅が年率▲0.3%から▲1.0%に拡大するという施策ですが、仮に3,000万円の借入額なら、総返済額でおよそ317万円も得をする計算になります(*)。対象となる住宅は耐震性や省エネルギー性など4項目のなかのいずれか一つでも基準を満たしていれば可。新築マンションを探している人にとって、対象物件を見つけることは決して簡単とはいえない割合のようですが、長期優良住宅に適合した物件を買うことに比すれば、選択肢は広いといえるでしょう。
ちなみに、この【フラット35】Sには「20年金利引き下げタイプ」もあります。これは長期優良住宅とほぼ同等の基準となっており、同じ借入条件(3,000万円)なら、約383万円と受ける恩恵がより広がります(*2)。長期優良住宅はご存知の通り、不動産取得税や毎年の固定資産税なども軽減されますから、そのトータルの優遇度合いは相当なものです。
これまで住まい選びは資産性の高さが重要視されてきました。とくにマンションでは立地条件が大きく関係することから、建物の品質よりも「まずは立地」といわれてきたのです。しかし2000年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(略して品確法)」を機に、住宅の性能が数字(等級)で表され、統一の基準(文言)で語られるようになりました。高い等級の物件は、分譲時のみならず流通市場においても”優良住宅”のお墨付きを携え、買い手に有利な条件を提示してくれます。主観的な目利きに頼る立地ではなく、客観的で共有しやすいこの性能表示が、今後の物件選びに「もうひとつの軸」を加えはじめたといえるのではないでしょうか。
いまや新築にこだわる傾向も以前ほどではなくなり、中古と並行して家探しをする人が増えました。分譲マンションは90年後半からの大量供給が10年以上続きましたが、その一部が優良ストックとなって新築マンションと競合し合っているのです。「立地重視の新しいもの好き」日本人のマイホームはいま、大きな価値観の転換期を迎えようとしているのかもしれません。
* 借入期間35年、元利均等返済、ボーナス返済なし、適用金利2.8%
*2 当初10年間年1.0%、11年目以降20年目まで年0.3%引き下げ(参考:住宅金融支援機構ホームページ)
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坂根康裕 リクルート『都心に住む』『住宅情報スタイル』元編集長。ブログ「高級マンション TOKYO」。All About「高級マンション」ガイドも努める。著書に『理想のマンションを選べない本当の理由』(ダイヤモンド社)
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