2010年10月13日更新
「新築マンション」と「中古マンション」の比較
新築には新築の良さがあり、中古には中古の良さがあります。マンション選びには、万人に共通した正解などはありません。あくまで個人の志向やライフスタイル、そして予算に見合った最良の選択がそれぞれに導き出されるものだと思います。
しかし、自分なりの解を求めるにしても、それが正しい選択になるためには「確かな選別の眼」が必要です。マイホーム購入の過程はそうそう経験できるものではなく、また失敗したからといって簡単にはやり直せないところが難点です。つまり、未体験なことを間違いなく成し遂げなければならない、とても重大な人生のイベントが家選びなのです。
「価格が安いから中古マンションにしたい」という声を良く聞きます。たしかに新築と中古では、相場がずいぶんと違ってきます。とはいえ、安い理由もしっかりと見極める必要があるでしょう。単に「中古だから安い」ではなく、古いと何が違うのか、年代ごとに性能の差があるのか、よく理解しておくべきです。
たとえば、広く知られている年代の差に「耐震性」があります。前回記事でも触れましたが、現在の耐震基準が定められた建築基準法改正(1981年)以前に建てられたものを「旧耐震」、以後のものを「新耐震」と呼んでいます。旧耐震でも耐震補強を施している建物もありますが、そうでないマンションは、安全性はもとより資産性にも影響を及ぼしているのではないかと言われています。
法令と照らし合わせて「マンションの生い立ち」を振り返ると、まだこのほかにも「長期修繕計画」(1997年標準管理規約改正)、「質のトラブルの回避」(2000年住宅品確法)、「管理」(2001年マンション管理適正化法)などさまざなな観点から住宅としての環境整備が時間と共に進んできたことがわかります。
つい先日も、”ヴィンテージの味わい”とキャッチコピーが入った築40年以上の中古マンションのチラシ広告を見つけました。都心の人気立地です。しかし、修繕積立金は「0円」となっていました。修繕費はどのようにしてまかなっているのでしょうか。とても気になるところです。
こうした物件を検討する際は、まず修繕・メンテナンス履歴ついてよく調べることをお勧めします。耐震診断の有無や(もし基準を満たしていないのなら)補強の計画が進んでいるかどうかも確認しましょう。メンテナンスが十分になされていない建物では、老朽化によるトラブルで、突然多額な出費を求められることにもなりかねません。管理組合がしっかり機能しているか入念に調べることです。中古マンションを検討する際には、できるだけリスクの範囲を把握しておくことが肝心なのです。
一方、中古マンションの利点のひとつに「実物が見られる」ことが挙げられます。そして、逆にこれが、青田売り(新築分譲)のリスクになります。自分が買う部屋や眺め、そしてマンションのグレードを象徴する外観やエントランスを一度も見ることなく、購入を決断しなけれなならないからです。モデルルームでは精度の高いCGパースが用意されていますが、巨大な建物や空間を2次元で理解するのは容易なことではありません。
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- 『家の時間』主宰
坂根康裕 リクルート『都心に住む』『住宅情報スタイル』元編集長。ブログ「高級マンション TOKYO」。All About「高級マンション」ガイドも努める。著書に『理想のマンションを選べない本当の理由』(ダイヤモンド社)
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新築か中古か?