2011年02月05日更新
知られざる名作、都心の低層マンション
江戸時代の大名屋敷を原点とする第一種低層住居専用地域は、法令等で制限を図りながら良好な住宅地としていまに受け継がれてきました。閑静な街並みのなかには、重厚感漂う高級マンションも所々に佇んでいます。規模、高さとも際立った条件を有していないにもかかわらず、独特の風格を備えた低層マンションは、タワー隆盛の現代にあってなお根強い人気を誇っています。ここに、都心を代表する「知られざる名作」を10棟ピックアップしましょう。
フォレストテラス松濤
所在地は渋谷区神山町。当該敷地は鍋島本家跡地にあたる場所で、松濤・神山町エリアの中でもやや高台に位置しています。総戸数はわずか26戸ですが、専有面積はすべて150平米以上の邸宅型マンションです。管理は森ビル。コンラン&パートナーズが設計した建物は、四方に異なる資材と色彩を施し(下の画像参照)、海外のリゾート地に見るような独特の風格さえ漂っています。
有栖川ヒルズ
所在地は港区南麻布。地勢(地形)は緩やかな南傾斜にあたり、南東側が有栖川宮記念公園に隣接しています。建物は1991年築。平均専有面積は全戸200平米超で、住戸(1戸)専用エレベーター、観音開きの玄関ドア、1.5m以上の廊下幅などバブルに沸いた当時の勢いをそのままに海外の高級コンドミニアムのような設計思想に基づいて建てられています。完全なる低層物件ではありませんが、同一コンセプトとして選定しました。
芝白金ヒルズ
所在地は港区白金台5丁目。南に「国立科学博物館付属自然教育園」が隣接しています。この施設は大名屋敷の庭園に端を発し、(皇室の)御料地として宮内省の管轄となった後に天然記念物・史跡に指定されています。園内は手つかずの原始林のようで、マンションの南側はリゾート地にいるかのような眺望が望めるのではないでしょうか。設計、分譲ともに三菱地所。1985年竣工。
クロイスターズ広尾
所在地は渋谷区広尾2丁目。広尾の尾根を走る「日赤通り」沿いに現地があります。山手線の内側では珍しい第一種住居専用地域内で、高台のじつに閑静な一画に佇んでいます。敷地は南間口が広く、地形(じがた)的にも日照条件に恵まれた建物です。最上階の(一部)住戸には暖炉を設けるなど本格的な邸宅を意識した設えが施されています。施工、分譲が鹿島建設。設計はアーキサイトメビウス。
白金ハウス
所在地は港区白金2丁目。現地は白金三光坂を登り切った高台の一画にあります。建物は円(アール)形で独特の外観デザインが印象的です。平均専有面積は180平米超。1991年竣工。施工が竹中工務店、分譲は野村不動産。
池田山プレイス
所在地は品川区東五反田5丁目。閑静な住宅街として根強い人気を誇る城南五山。そのなかでももっとも住宅街としてのスケールが大きく、地勢(地形)としても計ったような南傾斜の高台である池田山は都心有数の邸宅地として知られています。建物は地上3階建て。2004年築。分譲は三菱地所。設計、施工は竹中工務店。
レジェンドヒルズ市ヶ谷若宮町
所在地は新宿区若宮町。現地は外堀を南東方向に臨む市ヶ谷の高台にあたります。コンクリート打ち放しの雁行した壁面が連続する建物はレーモンド設計事務所が設計。都心のデザイナーズマンションと呼ぶにふさわしい1棟です。2000年築。売主は三菱地所他。施工は清水建設。
ミュゼ白金長者丸
所在地は品川区大崎。長者丸と呼ばれる閑静な住宅街の一画です。旗竿地の敷地の導入路地を進むと、忽然と白亜の洋館風低層マンションが目の前に現れます。売主はペアシティで知られる東高ハウス。専有面積はすべて150平米以上。1987年築。施工は竹中工務店。
パークコート二子玉川
所在地は世田谷区玉川4丁目。高級住宅街である岡本の丘を下った、小川沿いに現地があります。1つの街区をそのまま開発したため、接道は四方に。従前植えられていた大木群を保存しようと総合設計制度を活用。低層住宅地域ながら高さ制限の緩和を受けています。樹木にとりかもまれた建物はその姿が隠れるほどで、自然豊かな景観を維持継続することに成功した例をいえるでしょう。三井不動産(売主)のパークコートシリーズを代表する1棟です。2003年築。施工は東急建設。
上野毛レジデンス
所在地は世田谷区中町3丁目。上野毛の「ノゲ」は「崖」を意味することから国分寺崖線の上であるというのが地名の由来。駅から徒歩7分。坂を下って現地に向かいます。第一種低層住居地域内で周囲は一戸建てが立ち並ぶ住宅街です。四方道路の恵まれた整形地にロの字型に建物を配置。中央には少し起伏のある中庭を配しています。専有面積は全戸120平米以上。サッシュは木製。内井昭蔵建築設計事務所。2002年築。売主は三菱商事。施工は鹿島建設。
フォレセーヌ目黒平町
所在地は目黒区平町1丁目。尾根伝いを走る環状7号線の南西方向、閑静な住宅街にあります。平均120平米超のゆとりのある住戸で構成されています。売主はフォレセーヌ。施工は大成建設。2006年築。
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「フォレストテラス松濤」南方向から建物を撮影した画像。壁面はブラウン(南)、ホワイト(東西)、グリーン(北)の3色から構成。南立面は窓間にイエローバロウの枕木を埋め込み、重厚感を醸し出しながらも緑の多い住宅街の風景に程よく溶け込んでいます。
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坂根康裕 リクルート『都心に住む』『住宅情報スタイル』元編集長。ブログ「高級マンション TOKYO」。All About「高級マンション」ガイドも努める。著書に『理想のマンションを選べない本当の理由』(ダイヤモンド社)
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