2011年08月17日更新
「マンションの買いどき」が終わりを迎える!?
先々週の「マイホーム入門~不動産の基礎知識」にもありましたが、「フラット35Sの金利下げ幅拡大」が3カ月前倒しで打ち切られることになりました。住宅エコポイントもすでに終了。これでリーマンショック後の「100年に一度の不況」からうまれたマイホーム優遇策が次々と姿を消してしまうことになります。「マンションの買いどき」はもう終わってしまうのでしょうか。
そもそもマンションの買いどきは4つの指標で判断します。価格動向、金利動向、物件供給量そして優遇施策です。
まず「優遇施策」ですが、これは言うまでもなくその手厚さが薄まります。住宅ローン控除の借入金限度額も昨年の5,000万円から今年は4,000万円に。そして来年(平成24年)入居分はさらに下がって3,000万円になる予定。再来年は通常の2,000万円に完全に戻ってしまいます。他の施策同様、もともと時限付きですから、悪くなるというよりは今までが特別良かったと見るべきなのでしょうが。
では、残り3つの指標はどうでしょうか。
先月14日に不動産経済研究所が発表した「2011年上半期<首都圏マンション市場動向>」によれば、供給戸数は対前年9.8%減でした。同社が今年初めに予測した2011年の供給戸数は5万戸程度、2010年実績4万4,535戸の10%程度増だったのに対して、です。つまり、震災の影響で大幅に供給が後倒しになっていることがわかります。デベロッパーは、用地を仕入れたらその購入代金に金利が発生しますから、商品化を急ぎ、早期の資金回収を目指します。つまり、ゆっくりとはしていられない未供給分(余力)が十分にあると推察することができます。
次に、同レポートでは上半期の販売価格は神奈川県を除いて「単価、価格ともに下落」と述べています。2010年のマンション価格は千葉県を除いて単価アップしていたことから、今年は下落基調に入ったといえるでしょう。さらに、今後販売される物件はリーマンショック後に仕入れた用地が増えます。それらは値ごろ感のある価格設定でも十分採算が合うプロジェクトも多いとされています。したがって業界全体では、売り出しを控えた物件を下半期にかけてテンポ良く裁かなければならないのと同時に、買い手にとって魅力的な価格を設定できる状況にある、ととらえることができるのです。掘り出し物に出会うチャンスがあるかもしれません。
いままさに、マンション選びをしている方は、しっかりと相場観を身につけて、どれだけ魅力のあるプライスなのか判断できるようにしておきましょう。
最後に金利ですが、ここ数年住宅ローンは「超」がつくほどの低金利で借り入れることが可能です。変動金利は2%の前半ですが、実際は1%を切る提携ローンも用意されています。フラット35Sの金利下げ幅が1.0%から0.3%に戻ることになっても、市場にさほど打撃を与えないのではと業界側が見ているのは、こうした低金利の商品がバリエーション多く使える状況にあるからです。
マイホームの買いどきは、周囲の環境ではなく、ライフサイクルのなかでタイミングを見つけるべき。しかし、あきらかに高値のときに買ってしまったり、選択肢の少ない中からわざわざ選ぶことだけは避けたいものです。4つの指標をにらみながら、物件を見分ける目を持ち、この秋に備えましょう。
【参考記事】
■フラット35S金利下げ幅拡大の適用期間が前倒しで終了
■不動産経済研究所ホームページ
■東京の液状化予測マップ
■東京湾の津波対策見直し
■東京の土地の標高を調べる
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坂根康裕 リクルート『都心に住む』『住宅情報スタイル』元編集長。ブログ「高級マンション TOKYO」。All About「高級マンション」ガイドも努める。著書に『理想のマンションを選べない本当の理由』(ダイヤモンド社)