2012年01月11日更新
タワーマンションの住み心地を考える
タワーマンションといえば、見晴らしが良い、共用施設が豊富に揃っている、そんなイメージがまっさきに思い浮かぶのではないでしょうか。駅前の再開発に位置する事例も多いため、資産価値としても魅力だとの印象をお持ちの方も多いはず。分譲市場では、都心エリアを中心にタワーマンションの建設はまだまだ衰えることはなさそうな気配です。
しかし、マイホームとして見た場合、タワーならではの注意点があるのをご存知でしょうか。とくに商品性の色分けが明確になりはじめた昨今。単なる好みの違いと割り切るにはあまりに住み心地が異なってくるはずなのですが。どういうことか、ご説明しましょう。
タワーでも低層でも、一般的なマンションの間取りにはリビングスペースの外にバルコニーが付いています。バルコニーは専有部ではありませんが、専用使用権といって自分だけが使えるスペースです。避難通路としての役割も担うため制限はかかりますが、グリーンを置くなどしてインテリアを引き立てる場所にもなり、住まい方に大いに貢献してきます。何より有効な面積が広くなるわけですから単純にメリットを享受することができるわけです。
一方、通常床の下にある梁(順梁工法)を上に持ってくることで窓の高さを上げ、明るい室内が実現できる逆梁工法を採用した場合、バルコニーは極端に狭くなります(逆梁でもバルコニーを広く取っているケースもないわけではありません)。
タワーマンションの利点は冒頭触れたように、眺望が優れていることです。最近では足元から天井いっぱいまで大きな窓を付け、都心の上空をまるで飛んでいるかのように見せる工夫の施した例も増えてきました。以前なら窓の面積が大きくなれば断熱性の問題が問われたのですが、最近では窓の断熱性も上がったためにデメリットもいくぶん解消されたと設計側は判断しているようです。
つまり、バルコニー付きのタワーマンションとバルコニー面積を極端に抑えた眺望優先のタワーがあり、この二つは暮らし方がずいぶん違ったものになることをしっかりと認識してほしいと思っています。
バルコニーがあれば、換気もできるため住宅らしい住まい方になるでしょう。窓が汚れたら自分で拭くこともできます。かたやバルコニーがないマンションは窓がフィックスされ開かないことが多いため、業者に頼んで掃除をしてもらうしかありません。換気にも制限がかかります。とはいえ、ホテルのようなコンフォータブルな空間が手に入ります。そもそも内廊下の建物なら、通風もさほど期待できないのではという考え方があるのも確か。逆梁工法でにより、スタイリッシュな外観のデザイン性に優れたマンションになる得る可能性は高いといえます。
バルコニーを設置するか、採光眺望を優先するか。デベロッパーは明確なポリシーを持って選択している場合もあるでしょうが、敷地における建築条件によって判断しているケースも実際には多いようです。タワーマンションは背が高い分、柱や梁が大きく、室内空間を圧迫してしまうこともあるため、よく考えて選ぶことが後悔しない秘訣です。
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坂根康裕 リクルート『都心に住む』『住宅情報スタイル』元編集長。ブログ「高級マンション TOKYO」。All About「高級マンション」ガイドも努める。著書に『理想のマンションを選べない本当の理由』(ダイヤモンド社)