2012年01月21日更新
消費税増税とマイホーム購入のタイミング
政府与党は今月6日、現在5%の消費税を2014年4月に8%、翌15年10月に10%へ段階的に引き上げることを柱とする「社会保障・税一体改革素案」を決定しました。これまで幾度も議論されては先送りされてきた消費税引き上げ問題ですが、今回は何としても推進させたいとする野田首相の強い思いがみてとれるようです。
本当に消費税が上がったら…。家計だけを考えると正直想像したくはないのですが、今の日本の財政問題を考慮すれば現実の問題として向き合わざるを得ません。増税が現実のものとなれば、経済市場はさまざまな反応を示すと思われますが、もっとも注視されるひとつが高額消費のタイミング。マイホームはその筆頭に上がるでしょう。
「消費税が上がるとわかっていれば、早めに買ったほうが得?」そう思うのは自然の流れです。前例になぞらえると、1997年4月、当時の橋本内閣が消費税を3%から5%に引き上げたとき、住宅市場はその影響を多大に受けたことを思い出します。不動産の場合、土地に対しては非課税ですが、建物や仲介手数料には消費税がかかりますから、間違いなく住宅取得にかかるコストが上がると誰もが考える。だから、当時引き上げ前年の駆け込み需要は相当に盛り上がったと記憶しています。
しかし、前例という点では、税率が上がったあとの市場の急激な冷え込みも等しく理解しておくべきでしょう。需要を先食いしたわけですから、落ち込みは当然。買い手を欠いた商品は、商材を問わず、値下げやサービスを足して在庫処分にかかります。当時の分譲住宅もご多分に漏れず、完成在庫の長期化を避けるために、デベロッパーは家具付き販売や値引き対応をして捌こうと必死でした。つまり、消費税引き上げ後であっても実際の取引ではサービスが付いてきたということです。だからどっちがトクか、一概には言えません。
もし与党の素案通りに進むとなると、2013年から2015年前半にかけてはマイホーム特需が生まれるでしょう。ハウスメーカーやマンションデベロッパーはここぞとばかり、商品や物件を供給するのではないでしょうか。仮に2,000万円の建物なら100万円も多く税金を払う計算になります。家具一式の値段が早い決断で浮くとなれば、誰でもそちらを選択してしまいそうです。
つい先日も、ある大手マンション販売会社が「『消費税が上がるから』を理由にモデルルームを訪れる人が増えた」とするアンケート結果を発表しました。今後この手の需要喚起がメディアで多く露出されそうです。しかし前述の通り、現実の市場は机上の計算通りにはいきません。過去に学び、焦ることなく、本当に自分に合った住まい選びを実現させたいものです。
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- 『家の時間』主宰
坂根康裕 リクルート『都心に住む』『住宅情報スタイル』元編集長。ブログ「高級マンション TOKYO」。All About「高級マンション」ガイドも努める。著書に『理想のマンションを選べない本当の理由』(ダイヤモンド社)