2012年02月08日更新
「マンションの間取り」新潮流
マンションは、規模の経済をいかして住み心地の向上を図るという特長を持ち合わせています。例えば、その典型となるのが設備です。以前なら一部の高級マンションにしか備わっていなかった「自動食器洗い乾燥機」や「床暖房」、「ミストサウナ」などがいまでは3,000万円台の普及価格帯でもたいてい標準で装備されています。最近ではエコ分野での進化が著しく、太陽光パネル発電や電気自動車用の充電設備が急速に広がりをみせています。一戸建てでは導入を躊躇する高額設備も、ときに数百戸ものまとまったロットで発注するマンションだからこそ可能なのでしょう。
しかしながら一方で、規模が大きいほど逆に商品企画として見劣りにするものもあります。それが「間取り」です。一戸一戸、オーナーの希望(オーダー)を聞き入れていると、手間はもちろんのこと、全体の工期にも影響を及ぼしかねません。したがって、できるだけメニューを統一させ、バリエーションを設けながらも規格化してしまう方法を取らざるを得ないのです。
これは住み手からすれば、残念ながらプラスの要素にはなりえません。マンションが画一的、無個性だと言われるのはこうした事情からくるものではないでしょうか。
とはいえ、マンションの間取りが何十年も変わっていないわけではありません。浴室のサイズが大きくなったり、LDK(リビングダイニングキッチン)がより一体化するなどライフスタイルのトレンドにあわせて少しずつ変化はしています。また、最近では、マンション供給大手の企業が新たな試みをはじめました。2つの事例を簡単に紹介したいと思います。
ひとつは住友不動産の「カスタムオーダーマンション」。通常、新築マンションの間取りセレクト、カラーセレクトは選べる期間が決まっていて、工事が進むほど選択の余地は狭まります。しかし、「カスタムオーダーマンション」は完成後でも選ぶことが可能(無償。ただし、水回り位置だけは完成前までに限る)。躯体だけを仕上げて、内装工事をストップするというこれまでにない画期的なしくみを作り上げたのです。
もうひとつは三菱地所レジデンスの「スマートセレクト構想」。これは間取りが8タイプから選べるというもの。しかも建築家や家具収納ブランドとのコラボレーションによるプランニングで、70平米ながら、バルコニー側に浴室が面していたり、玄関の脇に土間があるタイプなど立地特性も考慮したアイデアが光ります。
昨今、マンションを買う人は資産価値に関心が高く、立地や建物の外観グレードに注意が集まる傾向にあるようです。しかし、住み心地に直結するのはどちらかといえば「インテリア」。間取り、内装、設備、家具。どれも替えられるものばかりですが、新築に住めばだいたい10年程度はその状態で暮らすことになります。そう考えれば、新築らしさのある期間にできるだけ満足度の高い家を目指したほうが良い。立地も大事ですが、プランも大事。トータルバランスをよく考えて選ばれることをおすすめします。
三菱地所レジデンスの「スマートセレクト構想」第一弾『ザ・パークハウス茅ヶ崎東海岸南』モデルルーム
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- 『家の時間』主宰
坂根康裕 リクルート『都心に住む』『住宅情報スタイル』元編集長。ブログ「高級マンション TOKYO」。All About「高級マンション」ガイドも努める。著書に『理想のマンションを選べない本当の理由』(ダイヤモンド社)