2012年02月15日更新
マンションに資産価値を求める理由
ここ数年、マンションを買おうとしている人たちは資産価値を重視する傾向にあります。購入相談を受けていると、ほとんどの検討者がそれを条件に物件を探しているのがわかります。
さかのぼればバブル崩壊後、「失われた10年」と称された1990年代後半から2000年前半にかけて、資産性に重きをおいてマイホームを探す人は、ほぼ皆無でした。昭和の高度経済成長から続いた土地神話が終焉し、住宅も消耗品と割り切らなければならないほど不動産デフレが長く続いたからです。ですから当時は、「永住志向でマンションを選ぶ」人が大半でした。売却を前提にしないキーワードが台頭したことからも、資産価値に対する期待の低さが伺えると思います。
では、リーマンショック以後、同じくデフレの環境下にありながら、なぜ今マンションを買おうとする人たちは資産性を重視するのでしょうか。それはひとえに、将来不安から来る自己防衛ではないか、と私は推察しています。
急激な高齢化社会の到来と人口減少によって、消費の縮小が危ぶまれるこれからの日本。経済の活力が衰退することによって、不動産の資産価値は全般的に低迷、需要を失った住宅も当然値下がりするだろうと予測できます。とはいえ、どの場所も均等に下がるわけではありません。人気不人気が一段と鮮明になり、大きく下落するエリアとさほど変わらないエリアとのすみわけが加速していくものと考えられます。
つまり、資産価値重視といっても、バブル前の「値上がり期待」ではなく、来たるべき人口減少社会に備え「どうせ買うなら、できるだけ値下がりしにくい物件を」という願望なのだと捉えることができます。そして、この傾向は資産性の強弱の色分けをさらに助長することとなり、二極化の進行をより進めることになるでしょう。
では、値下がりしにくい条件をあらためて挙げてみると、やはり『利便性(最寄駅、駅からの距離、生活利便施設の有無)』『居住性(周辺環境、空間、断熱性や生活設備)』『管理』などが代表的な項目になるでしょう。そしてすべてに共通すること、なかでもとくに立地面において重要なポイントとなるのが”希少性”です。ここでしか手に入らない眺望やグレード感、そしてピンポイントの環境面の魅力。
ひとつ例を挙げてみましょう。現在、株価低迷によって不況といわれる都心部の億ション市場のなかで、2億円クラスの住戸が驚くほどたくん売れている物件があります。マンション名は「平河町森タワーレジデンス」。事業主は森ビル。現地は、地下鉄「永田町」駅から徒歩1分。ところが、首都高が目の前にある場所で、地上から見たときの環境はお世辞にも良いとは言えません。しかしながら、20階以上になれば、視界が開け、国会議事堂をはじめとする永田町の街並みや広大な皇居の緑が眼下に広がります。港区では体験することのできない見晴らしは、まさにこれぞ希少性といえるもの。購入意欲の沸き上がるのが実感できます。
「ここにしかない」条件をいくつ見いだせるか。これからのマンション選びに欠かせない視点です。
「平河町森タワーレジデンス」23階ペントハウス 3Bedroom 244.14㎡(73.85坪)
価格 7億1,000万円(画像は、マスターベッドルーム(20.4畳))
-
<本当に暮らしやすいマンション選び バックナンバー>
マンションを選択する時代 高品質&低コストの家 マンション選びのコツ 家族が喜ぶ住まい
ヴィンテージマンションの条件 マンションのブランド選び 先進マンションの条件 自由な発想でデザインする
新築か中古か?
- 『家の時間』主宰
坂根康裕 リクルート『都心に住む』『住宅情報スタイル』元編集長。ブログ「高級マンション TOKYO」。All About「高級マンション」ガイドも努める。著書に『理想のマンションを選べない本当の理由』(ダイヤモンド社)