2012年03月20日更新
マンションの電気代節約
昨今、東京電力の値上げ問題が物議を醸しています。震災以降、原発の是非を問うことにはじまり、夏場の節電対策、そして原価上昇に伴う値上げなど、この1年、東日本では電力に関する話題で溢れています。普段、水や空気のようにさほど意識せず使っていた電気。我々の生活にはもはや切っても切り離せないインフラなわけですが、今までは思いも寄らなかったことに対して、いろいろと疑問が浮かぶようになりました。
例えば「原子力発電を使わずに電力を供給するには?」 「少しの努力や知恵を集めれば結構な節電になるのでは?」 「電力会社は選択できないのか?」 といったようなことをです。そこで今回は生活コストに直結することについて取り上げてみます。
日本では十数年前から段階的に「電力の自由化」が進められてきました。発電して電力会社に売る、あるいは地域ごとの大手電力会社以外と契約する、といったことが可能になったのです。これはひとえに競争原理を導入し、市場価格の適正化を図るのがねらい。つまり企業の新規参入を促すことで、電気料金はもう少し下がるだろうと政府は判断したのです。
しかしどうでしょう。自分のまわりを見渡してみても、LED電球に取り替えるなどして電気代を削減した例こそあれど、電気料金の「単価を下げた」とか「電力会社を切り替えた」といった体験談はほとんど耳にしません。自由化の波はまだまだ実感できない状況です。
とはいえ、新築マンションの購入を検討されている方なら、「一括高圧受電」という言葉に一度は触れたことがあるのではないでしょうか。これは、個々の住戸が低圧電力で電力会社と契約する従来の方法ではなく、建物全体で高圧電力のまま受電し、それぞれの住戸に分配する方式。これなら電気料金の単価が数十パーセント安くなります。一括受電を採用する新築マンションが少しずつ出てきたので、興味がある方は導入しているモデルルームで詳しい話を聞いてみると良いでしょう。また、既存のマンションでも一括受電方式に切り替える例が徐々に増えてきたようです。建物によってメリットに差があるようなので、事前の調査が必要です。
それともうひとつ、こちらはさらに認知の低いであろうと思われる対策をご紹介します。共用部の電気の基本料金を下げる方法です。
電力会社との契約は「負荷設備契約」といって、それぞれの設備に必要な電力の合計(最大値)で契約容量を決めるのが一般的です。マンションの場合、共用部にエレベーターや機械式駐車場といった大型設備を伴うため、相当余裕をもった容量での契約になってしまいます。一方、高性能な電子ブレーカーを導入することで使用状況に応じた契約容量に切り替える方法があります。これを「主開閉器契約」といい、建物によっては大幅に基本料金を減らすことが可能です。
一括受電や電子ブレーカーを活用し契約容量を切り替える方法以外にも、割安な深夜料金を使った料金削減や照明を切り替えることでコストダウンを図るなど他にもまだまだ対策はあります。
このような顧客の利益になる情報をなぜ電力供給者や管理会社は提示してくれないのか。ひょっとしたら、そんな思いが湧き起るかもしれませんが、こればかりは自ら情報を集めることも大事です。早期に着手すればするほどメリットを大きくしますから、一刻も早く行動に移したいものです。
【関連リンク】
■一括受電サービス
■電子ブレーカーの活用「主開閉器契約」
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坂根康裕 リクルート『都心に住む』『住宅情報スタイル』元編集長。ブログ「高級マンション TOKYO」。All About「高級マンション」ガイドも努める。著書に『理想のマンションを選べない本当の理由』(ダイヤモンド社)