2013年06月11日更新
多様化するマンションの免震構造
昨日、埼玉県新三郷で計画中の大規模マンション「パークホームズ新三郷」の記者発表会が行われました。地上10階建て、総戸数250戸。注目のポイントは駅徒歩3分という好立地。約51haの駅前再開発エリアには「IKEA(イケア)」「ららぽーと」「コストコ」など人気店舗が軒を連ねています。また、事業主は建物にもウリがあるといいます。最新の免震構造を取り入れたことです。
免震構造は、地盤と建物を絶縁し、その間に積層ゴムなどのアイソレーターをはさむことで地震のエネルギーが建物に伝わりにくくする構造概念のひとつ。建物の損傷や家具の転倒などを防ぐ効果があるとともに、柱や梁を軽減でき、空間にゆとりをもたらす工法でもあります。今回「パークホームズ新三郷」の設計施工を請け負った三井住友建設は、免震構造の応用技術として独自開発した「架構集約型免震構造(Sulatto3フリーノンビーム)」を採用しました。
名前を聞いただけで「何だか、よくわからない!」と思われた方もいるでしょう。これは通常、柱と梁を骨格に床と壁を組み立ていくラーメン構造を、開放廊下側の順梁とバルコニー側には中心部にだけグリッドと呼ばれる頑丈な枠(逆梁)をはめ、残りは細めの柱と厚めの壁で梁を極力減らした工法です。
具体的なメリットを挙げてみましょう。すべての住戸でバルコニー側は上部に梁のないすっきりとした空間になります。さらに、グリッドに掛からない住戸は一切梁がないため、ガラス手すりの間口はより開放感が高まるでしょう。19階建てとは思えないゆとりは、免震とこの最新工法のおかげといえなくなさそうです。
しかし、グリッドの取り付けられた住戸には、バルコニー下部に梁が生まれるため、視界の広がりや奥行が狭まり有効利用面積が小さくなります。また、戸堺壁が400mm以上と通常の倍以上もあるため、専有面積に対して内法面積が小さくなります。空間に凸凹が減るメリットは、これらの注意点やデメリットを克服するものと思われますが、見逃してはならないチェックポイントといえるでしょう。「最新の」や「初の」と付くと、すべてが良くなったという印象を与えがちですが、「実際の暮らしにどんな影響を及ぼすのか」できるだけ詳細に理解したいものです。
【物件概要】 | ||
所在地 | : | 埼玉県三郷市新三郷ららシティ2丁目 |
交通 | : | JR武蔵野線「新三郷」駅徒歩3分 |
総戸数 | : | 250戸 |
専有面積 | : | 69.58㎡~83.93㎡ |
入居 | : | 平成26年9月下旬 |
構造/規模 | : | 鉄筋コンクリート造地上19階建 |
売主 | : | 三井不動産レジデンシャル |
設計・施工 | : | 三井住友建設 |
【参考記事】免震と制震の基礎知識<番外編>
「IKEA(イケア)」商品でコーディネートされた「パークホームズ新三郷」モデルルーム 画像提供:三井不動産レジデンシャル
- 『家の時間』主宰
坂根康裕 リクルート『都心に住む』『住宅情報スタイル』元編集長。ブログ「高級マンション TOKYO」。All About「高級マンション」ガイドも努める。著書に『理想のマンションを選べない本当の理由』(ダイヤモンド社)