2013年11月19日更新
「プラウド」マンション建築費上昇の対抗策
本日(11月19日)、中井加明三(なかいかめぞう)野村不動産ホールディングス取締役社長は「最近の住宅マーケットと課題について」と題して日本不動産ジャーナリスト会議にて講演を行いました。おもなテーマは次の3点。「消費税増税後のマーケットと施策」、「高騰する建築費の対処」、「老朽化マンションの建て替えの促進」。消費税増税後の見立ては、都心部は影響がさほどなく、郊外や地方都市は冷え込みを警戒すべき、というものでした。大規模タワーマンション「トミヒサクロス」(新宿区)は10月に実施した1期2次(180戸)も即日完売。住宅ローン控除拡充後、つまり8%をあえて選択する顧客が予想以上に多かったということです。
2番目の建築コスト上昇の現状とその対処法について、少し詳しくレポートしたいと思います。
建築コストの上昇は、昨今業界内外で常に話題にのぼり、新築マンション価格の上昇懸念の大きな一つになっていることはご存知の通りかと思います。建設業界団体のデータによれば、2011年3月時点を100とした場合、2013年9月がおよそ108。つまり8%近く上昇していることになるわけですが、中井社長は「実感としてはその程度に収まらない。当社の発注ベース(実績)で計算してみると23%も上がっていた」。物件価格の割合でいえば4~5%にあたり、これを野村不動産のマンションシリーズ「プラウド」に価格転嫁するのか、あるいは利益の圧縮をせざるをえないのか。仮に利益を減らすことになれば「事業組成が困難になる」とまで言及。
そこで早急に対応策を検討。住宅オフィスビルを問わず、すべての発注を集約される組織「建設企画室」を今年4月に設置。ゼネコン・サブコンの関係強化にはじまり、プランや仕様の最適化、事業予算精度の向上を担い、バルク調達を労務を中心に推進。ミッションとしては「建物原価の10%(販売価格で200万円)の削減を目標にしている」という。
3点目の老朽化マンションの建て替えでは、旧耐震問題の解消が進まないなか、分譲マンションの建て替えは規制緩和が重要だと主張。具体的には容積率の割増し、税制優遇、建て替え要件の緩和を挙げました。記者からは「マンションだけ容積率を上げるのは不公平では?」との意見が出ましたが、旧耐震マンション建て替え問題ではいつもこの点が議論の分かれ目になります。
最後に来年度(消費税増税)以降の日本経済をどう予測するか、との問いに、安倍政権になって海外投資家の期待が俄然高まったことはIRで訪れた米国で実感したばかりだが、と前置きした上で、「最近の不動産動向でいえばアジアのお金が都心に向かっていることが大きい。米国のエネルギーコスト抑制による経済成長が継続し、ドル高円安の構造が崩れなければ、来年も堅調ではないか」と推察されていました。
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野村不動産ホールディングス株式会社 取締役社長 中井加明三氏(正面中央)
- 『家の時間』主宰
坂根康裕 リクルート『都心に住む』『住宅情報スタイル』元編集長。ブログ「高級マンション TOKYO」。All About「高級マンション」ガイドも努める。著書に『理想のマンションを選べない本当の理由』(ダイヤモンド社)