2014年04月16日更新
新築マンション価格は、ミニバブルの水準を超えた!?
不動産経済研究所が発表した「首都圏マンション市場動向調査」によれば、3月度の契約率は79.8%、平均価格は5,215万円でした。市況の好不調の境目は70%といわれていますから、売れ行きは変わらず絶好調。価格は前年同月比で8.5%アップ(戸当たり408万円増)、単価は同8.6%(5.8万円/平米当たり)上昇。もはや新築マンションにおいてはインフレ途上にあると申し上げなければならない状況です。消費増税の経過措置(2013年9月末)後も目立った落ち込みは見られず、依然アベノミクスによる価格先高観、金利先高観が需要を底上げし、加えて東京五輪(2020年)開催決定と受けて、湾岸エリアの物件も順調に売れている状況を見れば、都心を中心としたマンションブームは一過性のものではなかったという他ありません。前回増税(1997年)の反省を受け、増税と同時に「住宅ローン控除拡充の実施」を早期からアナウンスしたことや住宅購入資金の贈与税の非課税枠拡充なども多いに奏功したといえるでしょう。
年間供給戸数5、6,000戸レベルの大手デベロッパーの話では、2014年3月の契約戸数は1,000戸レベルに達したところが数社にのぼり、直近でも予想以上の駆け込み需要があった模様です。これだけ好調だったわけですから、多少の反動は覚悟すべきでしょう。しかし、贈与税の非課税枠拡充の延長見込みも4月早々に公表しました。落ち込みを最小限に留めようとの思惑がみてとれます。さて、消費増税による影響よりも気掛かりな点が「値上がり」です。下のグラフは、この10年間の首都圏の新築マンションの「売れ行き(契約率)と価格(販売単価)」の推移を示したもの。「販売単価」がミニバブル期(2007年前後)の水準に達していることがお分かりいただけると思います。一方、「契約率」はミニバブル期には(値段が上がりすぎて)70%ライン(好不調の分かれ目)を大きく下回ったのに対し、直近では80%前後と高い数値を維持しています。
申し上げたいことは何か。単純に「値上がりに要注意」と言いたいわけではありません。マンション供給の都心比重が高まっていることや郊外バス便物件が減少していることなど、データの背景には様々な事象が潜んでいます。だから、まずは「自分が買いたいと思う立地特性を知ること」が重要です。例えば、郊外で相場が強含みなエリアもありますが、インフレ見込・円安・株高・といった都心部にける好調理由はまったく当てはまりません。それは、供給空白エリアだったり、近隣の一戸建て居住者による買い替え需要だったり、交通インフラによる利便性の向上などすべてに「個別要因」が存在します。逆にこれといった目立った特徴のない物件には、少子高齢化による住宅需要の減少が少なからず影響しているようにも思えます。都心部では、環状2号線の開通により人の流れが大きく変わろうとしています。資産価値が目に見えて上昇するエリアが今後出てくるでしょう。すでに多少値上がりしていたとしても、さらに期待できる可能性を秘めているといえます。繰り返しになりますが、これからマンションを買おうとする人は立地ごとの個別要因をできるだけ多く情報収集する必要があります。
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- 『家の時間』主宰
坂根康裕 リクルート『都心に住む』『住宅情報スタイル』元編集長。ブログ「高級マンション TOKYO」。All About「高級マンション」ガイドも努める。著書に『理想のマンションを選べない本当の理由』(ダイヤモンド社)