2014年04月30日更新
そのマンションは街のストック(財産)になり得るか
マンションの分譲販売は「竣工在庫を出さないこと」が命題になります。なぜなら完成して売れ残りのイメージが市場に浸透してしまえば、購入検討客から値引きを要求されたり、人件費や広告費、管理費などのコストが嵩んだりするなどして利益が圧迫されるからです。竣工した時点(建築費の支払い)より前に、投資の回収(収益確定)ができれば、金融機関からの信用を得ることができ、次のプロジェクトも取り掛かりやすくなります。最も理想的な状態は「即日完売」の繰り返し。営業部隊のムードもメリハリが生まれ、計画通りの業績を積み上げていくことができます。
しかしながら、これらはすべて製造側(売主)の都合です。注意しなければならないことは、購入側は完成してから使い続けるということ。住まいは10年20年経ってはじめて真価が問われるはずのものなのに、早期完売を求めるがあまり「長い目で見た品質や機能」がないがしろにされてしまっては本末転倒です。
建築物はおもに①設計→②着工→③竣工→④引渡し・入居→⑤維持管理・修繕→⑥解体といったサイクルでその役割を全うします。マンションデベロッパーは購入者が満足度を感じる④~⑤を考え設計(①)し、施工管理(②)を行い、施主検査(③)をします。が、企業評価を左右するのは、いかに着工(②)から引渡し(④)までを短縮できるかで、前述の通り、事業存続のためには当該期間(およそ1年~3年程度)に人的資源を集中せざるを得ないのです。
そのマンションが街のストック(財産)になり得るかどうか。一朝一夕には評価が定まらない分譲マンションを青田(工事中)の段階で判断することは容易ではありません。ある程度築年数が経った物件を見比べて、差を実感する調査行為などは知識を高める上で有効な手段です。資産性と居住性は、(立地を除き)決め手が異なっている点に注意しましょう。資産性は建物の外観、エントランス、植栽、管理、面積の大きさなど希少性が重要で、居住性は間取り、設備、空間の広がり、収納など専有内の印象が中心になります。
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- 『家の時間』主宰
坂根康裕 リクルート『都心に住む』『住宅情報スタイル』元編集長。ブログ「高級マンション TOKYO」。All About「高級マンション」ガイドも努める。著書に『理想のマンションを選べない本当の理由』(ダイヤモンド社)