2014年05月14日更新
新築マンションのモデルルーム評価が人によって異なる理由
新築マンションは工事中に分譲をはじめる「青田売り」が主流ですが、何もなければ検討できないため、デベロッパーは模型、パネル、図面、そしてモデルルームなどを設営し、来場者に理解を深めてもらいます。なかでも空間をイメージしやすいモデルルームは、買い手の購入意欲が盛り上がる場所でもあり、売り手はデザイナーと別途提携するなどして、見栄えのある空間に仕上げます。
ところが、このモデルルームの評価が人によって異なる場面が珍しくありません。立地や価格設定に対しては、それほど大きな乖離がみられないのに対して、モデルルームではなぜ見る人によって善し悪しが分かれるのでしょうか?
もちろん、「好みの問題」はあるでしょう。しかし、それを取り除いたとしても評価はバラバラなことが多いのです。業界に携わる人同士であっても似た傾向はあります。
もっとも大きな理由は「経験値の違い」です。これまで住んだことのある、または空間に居合わせた住宅との比較で、人はまず判断をします。わかりやすい例でいえば、システムキッチンを使ったことがない方であれば、たとえ一般的なグレードでも新築マンションのキッチンは非常によく見えるでしょう。とくに機能面では称賛される姿を見かけます。洗面や浴室、玄関や収納なども比べやすいのではないでしょうか。バルコニーの広さ、ガラスの質、換気機能、内装デザインなども洗練されていると感じる人は少なくないはずです。
ところがハイグレード物件に住んでいる人や海外暮らしの経験がある人などは簡単に高評価を与えない傾向があります。それは天井が低いと感じたり、キッチンの動線(シンクと冷蔵庫とコンロの位置関係)が不満だったり、柱や梁の出っ張りが気になるといった具合に、です。購入予算ではなく、過去の住宅遍歴またはモデルルームの見学件数や様々な良質な空間を体感した度合などによって見方が変わるのですから、人によって評価が異なるのはごく自然な現象だと捉えることができます。
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- 『家の時間』主宰
坂根康裕 リクルート『都心に住む』『住宅情報スタイル』元編集長。ブログ「高級マンション TOKYO」。All About「高級マンション」ガイドも努める。著書に『理想のマンションを選べない本当の理由』(ダイヤモンド社)