2014年09月03日更新
タワーマンションの防災対策
東日本大震災を機に、タワーマンションの防災対策を見直すデベロッパーや管理組合が増えています。大手マンションデベロッパーの三菱地所レジデンスや三井不動産レジデンシャルでは、「免震・制振などより耐震性能が高い構造の採用」「防災訓練スキルの提供(共有)」「家具転倒防止対策」などを新設。物件ごとの判断ではなく、統一ルールにした点が特徴です。
すでに竣工したタワーマンションにおいても積極的に防災対策の改革を取り組む例も見られます。「パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー」では、自主的に防災委員会を結成。各分野の専門家はもとより、主婦にも参加してもらうことで(幅広い視点から)実効力の向上を図っています。防災倉庫新設(各階)や長周期地震動に対する検証などハード面の対策を講じる一方、備蓄用飲料水(1800リットル)を地下から59階全階に運搬する作業を住民総出で試してみるなど超高層ならではのシミュレーションまで行っています。参考記事はこちら。
都心で多くの超高層ビル群を抱える森ビルは、大規模災害発生直後の「自助」対策を見直し、管理運営する約3,000住戸に防災備品バッグ「エマージェンシーキット」を配布しました。防災の日(9/1)を目前に控えた2014年8月30日(土)には備品解説と実際に体験してみるイベントが「六本木ヒルズレジデンス」43階スカイラウンジにて催されました。
「エマージェンシーキット」とは?
収められている防災備品は全部で11点。備品を収納する「バッグ」自体にも防水加工が施されているため、災害用井戸から生活用水を運ぶ容器として使うことも可能です(その際肩で背負う用のストラップを取り付けられる)。次に、「飲料水用のタンク(10リットル)」。そして、重量のある(水など)荷物を運ぶための「キャリーカート」も同梱されています。エレベーターが稼働していても、運搬が楽ではないとの結論に至った模様です。
また、身体を清潔に保つための「ドライシャンプー」や「ボディタオル」も含まれています。「ドライシャンプー」はムース状のシャンプーを手で髪に付け、櫛などで梳かした後ふくだけ。「ボディタオル」は300mm×600mmの大判サイズが特徴でノンアルコール、無香料、無着色。未開封の場合は5年間保存することができるそうです。さらに、停電時室内を照らすLED照明の「ランタン」と「ライト」。それぞれ70時間、100時間点灯することができます。ランタンは紐が付いているため吊り下げても可。その他には「簡易トイレ」「絆創膏」「軍手」「ガムテープ」。
3年に一度は全員が参加する総合防災訓練
同社は「防災の日」(9/1)、社員500名が参加する総合防災訓練を実施(場所「六本木ヒルズアリーナ」)。10数名のグループに分かれ、心肺蘇生(AED)、起震車体験、救急搬送、炊き出し・バーナー操作、ロープ、応急救護、消火活動(消火器)などを習得します。同社では役員、社員すべてが3年に一度防災訓練を体験するプログラムが定められています。
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- 『家の時間』主宰
坂根康裕 リクルート『都心に住む』『住宅情報スタイル』元編集長。ブログ「高級マンション TOKYO」。All About「高級マンション」ガイドも努める。著書に『理想のマンションを選べない本当の理由』(ダイヤモンド社)