2015年12月15日更新
中古マンションは、いつが売りどきか?
これまで「マイホームはいつが買いどきか」「マンションはどんな物件を選んだら良いか」といった問い合わせが多かったのですが、最近ではそれらに加え「売りどきはいつか?」という質問が増えました。アベノミクス以後、都心では新築中古を問わずマンションの価格上昇が顕著ですが、それがいつまで続くのか、いずれ手放すなら高いときに売りたいという心理がはたらいているようです。前提として長期的には人口減少、中期的には東京五輪2020後のブーム終焉、短期的には消費再増税による景気低迷等、需要を減退させかねないリスクが待ち構えていると考えているのではないでしょうか。
金融緩和や為替変動など、根源的な環境要因以外の動向によって不動産価格は大きく影響を受けます。昭和のバブル然り、直近のアベノミクス然り。しかしながら、不動産の価格相場に影響を及ぼす不動の方程式は「需給のバランス」に他なりません。ここでは住宅の、それも変動著しい中古マンションに限定して需要と供給の変化の一端を確認したいと思います。
まず、成約単価と逆のトレンドを示す「在庫戸数」です。「一都三県四半期ごと中古マンション在庫戸数<前年比>」を表したのが下のグラフ。2009年後半から2010年にかけて在庫を大きく減らしたところから始まっています。これはリーマンショック後に膨らんだ在庫が「価格下落」や「税制改正(住宅ローン減税拡充)」などによって売れ行きが良くなったため。2011年には東日本大震災や政治不安から景気が低迷し、在庫が増えています。その後アベノミクスで急減。直近では、東京都の急増が注目されます。
一都三県 中古マンション在庫戸数 昨対増減率(四半期ごと)
では、東京都における中古マンションの「価格帯別」在庫トレンドを見てみましょう。2015年に入ってからは、7000万円超1億円以下、5000万円超7000万円以下、3000万円超5000万円以下の順で在庫が増えていっているのがわかります。最も低いのは1000万円未満で、これに限ってはアベノミクス以後好調に推移していたと推察できます。
東京都 価格帯別中古マンション在庫戸数 昨対増減率(四半期ごと)
では、売れ行きが悪いのかというと、まだまだそういう状況でもないようです。下のグラフは成約戸数前年比を示したものですが、在庫同様高額帯の成約戸数が前年比を上回って推移しています。大きく伸ばしているのが7000万円超1億円以下、5000万円超7000万円以下。1000万円以下は、このトレンドを見る限り出物自体が少なくなっていると読み取ることができます。
東京都 価格帯別中古マンション成約戸数 昨対増減率(四半期ごと)
以上のデータから、東京都の中古マンション市場においては、需要は変わらず旺盛といえるのではないでしょうか。成約戸数は前年を下回っている場面もありますが、これは2013年が良すぎたから。高価格帯も伸びています。しかし、在庫の増加傾向には引き続き注意を払う必要がありそうです。堅調な市場環境のうちに売却したいと考える人が潜在的にいることは確かでしょうし、何より昨今は不動産市場を問わず金融の動きが早く、潮目があっという間に変わってしまうからです。さらに留意すべきは、価格帯によってその動き方が随分異なるということ。今回のデータは一都三県や価格帯で分析していますが、より細分化して動向を把握したいものです。
東京都 中古マンション新規登録戸数 昨対増減率(四半期ごと)
- 『家の時間』主宰
坂根康裕 リクルート『都心に住む』『住宅情報スタイル』元編集長。ブログ「高級マンション TOKYO」。All About「高級マンション」ガイドも努める。著書に『理想のマンションを選べない本当の理由』(ダイヤモンド社)