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中島早苗の「心地いい場所」

2011年02月23日更新

2011年も、四国へ

 このところ毎初春、四国へ行っている。

 昨年のこの欄でも書かせていただいたが、土佐は母の故郷なので
生まれてから行かなかった年を数えた方が早いぐらい。

 しかし、四国で驚くのは、4県しかない島なのに
隣の県に行くと食文化などが結構違うこと。
 4県しかないとはいえ、太平洋側と瀬戸内側では気候も違い、
獲れる魚も違うので、無理もないかもしれない。

 今年は香川から愛媛へと移動。
 香川ではもちろん、讃岐うどんを堪能し、今年は友人が
うどん学校まで予約してくれたので、うどん作りにも挑戦した。

 讃岐で食べるうどんは、他で食べるうどんと全く違う。
 昨今は東京にも讃岐のうどん店が進出しているので、
近い味、店によってはほとんど讃岐と同じ味が楽しめるように
なったとはいえ、その数はまだまだ少ない。

 讃岐に行かれたことのない方に、本場のうどんが
どんな風に美味しいのかを説明するのは難しいのだが、
「生」ならではの楽しみとでも言おうか。

 その日に打ってその日に食べる。打ちたて、ゆでたて。
 何でも「~たて」に勝る美味しさはないだろうと思うが、
まさに讃岐のうどんもそういう感じ。

 しかも、その日に売れる分だけを打って供している
本場の多くの店では多分、使うのは小麦粉と水、塩だけだと思う。
 よけいなものの入らない、混じり気のないシンプルな素材の味。
 小麦粉本来の甘みと香りを味わう、小麦粉の刺身というか。。。

 チョコレートにたとえるなら、讃岐以外のうどんが
普通の板チョコとしたら、讃岐うどんは生チョコ、という感じ。
 うーん、説明すればするほどくどいですね、我ながら。。。

 香川を後にし、今年は松山へ。
 こんなに毎年のように四国へ来ているのに、
松山を訪れるのは実は初めてである。
 松山といえば『坊っちゃん』。
漱石先生の『坊っちゃん』を読んだのは中学生の頃だったろうか。

 そして松山は、やはり尊敬する正岡子規の故郷でもある。
 司馬遼太郎先生の『坂の上の雲』ブームで、親しみを感じる
読者の方も多いのではないか。

 さらに、松山といえば、道後温泉。
 この温泉は3000年の歴史を誇る日本最古の温泉とも言われ、
大国主命が病気の少彦名命を浸して癒したという神話や、
聖徳太子も入浴した記録があるのだとか。

 そんな道後温泉のシンボルと言えば、近代和風建築の道後温泉本館。
 明治27年に建てられた木造三層楼の本館は、温泉建築としては唯一、
国の重要文化財にも指定されている。

 道後温泉本館のよさは、温泉に浸かるだけなら400円という、
銭湯並みの気軽さで楽しめる点。
 明治期以降、多くの政治家や文人も訪れた風趣ある建物を味わいながら、
湯船から豊かに溢れる源泉掛け流しの湯を、日帰りでも堪能できるのだ。

 私ももちろん、浸かりに行きました。
 泊まっていたホテルが、浴衣と下駄のままタオルや石鹸を持って
道後温泉本館に湯浴みに行かれるセットを用意してくれたので、
カラコロと身軽に湯の町散歩。

 小さな町にはそこここに足湯も用意されていたので、
ちょっと足をとめて足湯に腰掛け、地酒のワンカップなど開けてみたり。

 歴史や文学に思いを馳せながら熱い湯に浸かり、
魚と地酒を楽しめる道後。
 今は、もう暫く寒さが続きそうな東京で、
のんびりとした湯けむりの町を思い出しています。


香川県琴平町にある金刀比羅宮、旭社。こんぴらさんの名で親しまれるこの神社は象頭山の中腹に位置し、本宮まで785段の石段を上ると息がきれる。。。


讃岐のうどん店にて。現地のうどん店内には、写真のようにおでんや天ぷら類が置いてあって、自分で好きなものをとって会計する場合が多い。


うどん学校でうどん打ちに挑戦。学校と言っても、1時間程度の実習をすれば、卒業証書なるものをもらえる。この日も何十というグループが列をなしていたし、手塚治虫さんなど錚々たる方々が訪れた証があって、大繁盛の模様。


道後温泉本館前にて。一日平均3000人が入浴するというから驚き。朝6時の一番風呂を楽しみに来る地元の人から観光客と、さまざまな人がいるのがいい。

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リビングジャーナリスト・「家の時間」編集主幹
中島早苗
リビングジャーナリスト・「家の時間」編集主幹 中島早苗

1963年東京生まれ。日本大学文理学部国文学科卒。アシェット婦人画報社で12年在籍した住宅雑誌『モダンリビング』を始め『メンズクラブ』『ヴァンサンカン』副編集長を経て独立。約20年間400軒あまりの家と家族、建築家、ハウスビルダーなどへの取材実績を基に、「ほんとうに豊かな住まいと暮らし」をテーマとして、単行本や連載執筆、講演等活動中。著書に『建築家と家をつくる!』『北欧流 愉しい倹約生活』(PHP研究所)『やっぱり住むならエコ住宅』(主婦と生活社)『住まい方のプロが教えるリフォーム123のヒント』(日本実業出版社)『建築家と造る「家族がもっと元気になれる家」』(講談社+α文庫)他。

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