2011年11月22日更新
2011年10月登録開始「サービス付き高齢者向け住宅」
高齢になって、介護を受けながら住める場所というと、
皆さんはどこを思い浮かべるだろうか。
ご自身に介護経験でもない限り、パッと思いつくのは、
数年待ちもザラにあるいわゆる特養か、
入居一時金が高額な有料老人ホームぐらいではないだろうか。
わたくし事で恐縮だが、今年の初めに実父が倒れた。
脳梗塞で、およそ1ヶ月間病院で寝たきりでいたら、
あっという間に歩けなくなり、要介護4の身になった。
その後退院できますと病院に言われたものの、
歩くことはおろか、トイレも一人でできない父を
普通の一戸建ての我が家に連れて帰っても、そのままでは住めない。
私は必要にかられ初めて、要介護でも暮らしやすい
施設か住宅の選択肢について調べてみたのである。
ご参考までに、要介護の人でも住める主な施設、住宅を、
上から高額と思われる順に書いてみる。
有料老人ホーム
サービス付き高齢者向け住宅
シルバーハウジング
軽費老人ホーム
認知症高齢者グループホーム
介護療養型医療施設
老人保健施設
特別養護老人ホーム(特養)
あれこれリサーチして驚いたことの一つは、
特養の待機者の多さである。
定員の10倍、例えば百人の特養で、
千人が待っていますと言われたこともあった。
そんな人数が待っていて、1年で入れるとも思えない。
待っている当人は元気な若い人でなく、要介護の高齢者なのだ。
1年以内に寿命が尽きてしまわないとも限らない。
つまり、全国で42万人が入居待ちという特養は
システムとして機能していないに等しい。
必要に応じて介護を受けて暮らせる高齢者住宅が全く足りないため、
介護度の低い人や、高所得の人など、
他に選択肢があれば特養を選ばなくてもよいケースの高齢者も
一様に入居待ちをしているのである。
高齢者の数は今後も急速に増えてゆく。
国交省によれば、高齢者単身・夫婦世帯は、
2010年に1000万世帯だったのが、
2020年には1245万世帯に増えると予測されている。
そんな中、日本は諸外国に比べると、
高齢者向け施設は既に同等に近い割合でつくられたものの、
高齢者住宅は圧倒的に不足しているのだ。
全高齢者に対する高齢者住宅の割合が英国、デンマーク共に
8%台であるのに対し、日本は0・9%。
国交省は、2020年までに3~5%に増やすことを、
成長戦略に盛り込んでいる。
施策の一つとして国は今年、高齢者住まい法を改正。
これまで幾つかに分かれていた高齢者向けの賃貸住宅を
「サービス付き高齢者向け住宅」として一本化、2011年度予算で325億円を投じ、
3万戸を確保するという。
。。。と、ここまででかなり長くなってしまった。
どんな住宅かということと、実際に取材した例を紹介したかったのだが、
詳細は次回に続けさせてください。
- リビングジャーナリスト・「家の時間」編集主幹
中島早苗 1963年東京生まれ。日本大学文理学部国文学科卒。アシェット婦人画報社で12年在籍した住宅雑誌『モダンリビング』を始め『メンズクラブ』『ヴァンサンカン』副編集長を経て独立。約20年間400軒あまりの家と家族、建築家、ハウスビルダーなどへの取材実績を基に、「ほんとうに豊かな住まいと暮らし」をテーマとして、単行本や連載執筆、講演等活動中。著書に『建築家と家をつくる!』『北欧流 愉しい倹約生活』(PHP研究所)『やっぱり住むならエコ住宅』(主婦と生活社)『住まい方のプロが教えるリフォーム123のヒント』(日本実業出版社)『建築家と造る「家族がもっと元気になれる家」』(講談社+α文庫)他。