2012年11月21日更新
画家 蓜島庸二さん個展を訪れて
画家の蓜島庸二さん
の個展が、
馬喰町ART+EAT
にて、11月30日まで開催中だ。
今回のタイトルは
『線とかたちの桃源郷』Cloned Venus, 予兆・破壊と再生の30年
だという。
アヴァンギャルドな蓜島さんの作品は
私のようなアートの素養のない者にとっては
時に難解であるが、それでも発表の案内をいただくと
ほとんど必ず見に行ってしまう。
蓜島さんは1931年東京生まれ。
81歳という年齢だが、とてもそうは思えない若々しさだ。
同年代だという素敵な奥様も、やはり15歳ぐらいはお若く感じる。
実際に重ねた年齢よりも若々しくあられる方に共通する特長だと思うのが、
単に見た目の造形の問題ではないという点。
身のこなしや感性、考え方、好奇心などのあり方までが若々しく、
話をしたり、表情を拝見したりしても
平均的な80代とは大きく違うように感じるのである。
それは、尽きない興味の対象や、まだまだやってみたいことがあるかないか、
自分以外の人や周りにいる、あるものとつながりたいという
意欲があるかないかの差なのだろうか。
蓜島さんは約40年の長きに亘り、
雑誌『いけ花龍生』の編集もされていた。
蓜島さんと知り合ったのは、私が出版社勤務時代、
編集に携わっていた住宅雑誌の取材で、
アトリエに伺ったのがきっかけだった。
蓜島さんの作品群や、
建築家の東孝光さん設計のアトリエももちろん素晴らしかったのだが、
主である蓜島さんと奥様の人間的魅力に、
初めてお会いした時から、私はすっかり参ってしまったのだ。
なんと言えばいいのだろう、会ったばかりの人をも受け入れる
オープンマインドな感性、人を差別しないリベラルさ。
そして何より、その明るさが、ご一緒する者をも明るくさせる。
以来、20年余が経ったろうか、今も変わらずこちらを覚えて、
発表の案内をくださる。
ありがたいことである。
Cloned Vinusクローンドヴィーナスとは、蓜島さんの絵画の方法に対する呼び名。一度完成した自分の絵画の一部を切り取って新しいキャンバスなどの上におき、あたかもクローンするように描き継いで新たな作品を生み出していく、自分で自分の絵をコピーするような方法。
桃源郷ツアーの記念撮影のためのパネルに、蓜島さん(左)と共に収まって。
私が借用しているジャケットは蓜島さんが以前、雑誌『流行通信』のために制作したもの。
- リビングジャーナリスト・「家の時間」編集主幹
中島早苗 1963年東京生まれ。日本大学文理学部国文学科卒。アシェット婦人画報社で12年在籍した住宅雑誌『モダンリビング』を始め『メンズクラブ』『ヴァンサンカン』副編集長を経て独立。約20年間400軒あまりの家と家族、建築家、ハウスビルダーなどへの取材実績を基に、「ほんとうに豊かな住まいと暮らし」をテーマとして、単行本や連載執筆、講演等活動中。著書に『建築家と家をつくる!』『北欧流 愉しい倹約生活』(PHP研究所)『やっぱり住むならエコ住宅』(主婦と生活社)『住まい方のプロが教えるリフォーム123のヒント』(日本実業出版社)『建築家と造る「家族がもっと元気になれる家」』(講談社+α文庫)他。