2012年12月19日更新
時代のニーズで生まれた「2.5世帯住宅」
「二世帯住宅」は、1975年に旭化成ホームズが提案した
親世帯と子世帯の新しい同居のスタイルだった。
そして今、同社は「2.5世帯住宅」
を提案している。
簡単に言えば、親世帯と子世帯のほかに、単身の兄弟姉妹
(親世帯から見れば子ども)も一緒に住むスタイルだ。
0.5世帯は厳密に定義されているわけではなく、
ときには祖母だったり、単身の兄弟姉妹が複数いたり、
離婚して子連れで帰ってきたバツイチの姉や妹だったりする。
こうした「2.5世帯住宅」は、
旭化成ホームズが提案するスタイルだが、
失礼ながら必ずしも同社の
へーベルハウスに住んでいなくとも、
世の中にはこうした組み合わせの家族が
けっこう見かけられる。
単身者が一人住まいするのでなく、
親、家族がいる家で住むようになった背景には、
幾つかの時代的要因があげられる。
一つは東日本大震災だ。
この震災をきっかけに、家族の存在、絆が見直され、
三世代同居に前向きな30、40代が
近年増えているという報道を読んだ。
過日私が取材した都内のリフォーム会社でも、
結婚して一度は独立した子世帯が、
親の家に戻って一緒に住むためのリフォームが
増えているという話を聞いた。
社会人になり親の家から独立し、
自分の家を持つのが一人前、といった
「一家族一住宅」の時代は終わり、
イニシャル&ランニングコスト節約、
家事や育児分担など、リスクが少なくメリットが多い
同居が見直されているようなのだ。
加えて生涯未婚率が高まり、
親の家に住んだままの独身の子どもも増えている。
2010年の国勢調査によれば、
30代後半男性の未婚率は約36%(30年前の約4倍)。
同様に、婚姻件数における離婚件数の割合は約36%と
30年前の約2倍になっている。
また、60歳代が世帯主の家族は、
80年代以降最多だった夫婦のみの世帯を抜いて、
親と単身の子どもで暮らす世帯が急速に増え、
最多となった。
旭化成ホームズの二世帯住宅の例。中庭を世帯間のコミュニケーションの場に。
同2.5世帯住宅の0.5世帯(単身者)用スペースのイメージ。洗面化粧台もあり、プライバシーが守られるプラン。
(画像提供:旭化成ホームズ トップページも)
これらの数字から読み取れるのは、
結婚しなくなり、離婚が多くなった子どもが、
不況の影響もあり一人住まいをするのでなく、
親元に残る、帰るといった現象だ。
こうした社会のニーズを考えると、
2.5世帯住宅は資産上、生活上の
そして家づくりでのリスクを減らしたい、
集まって住みたいという志向の人たちと、
単身者の受け皿となって、
これから増えていくのではないかと思われる。
- リビングジャーナリスト・「家の時間」編集主幹
中島早苗 1963年東京生まれ。日本大学文理学部国文学科卒。アシェット婦人画報社で12年在籍した住宅雑誌『モダンリビング』を始め『メンズクラブ』『ヴァンサンカン』副編集長を経て独立。約20年間400軒あまりの家と家族、建築家、ハウスビルダーなどへの取材実績を基に、「ほんとうに豊かな住まいと暮らし」をテーマとして、単行本や連載執筆、講演等活動中。著書に『建築家と家をつくる!』『北欧流 愉しい倹約生活』(PHP研究所)『やっぱり住むならエコ住宅』(主婦と生活社)『住まい方のプロが教えるリフォーム123のヒント』(日本実業出版社)『建築家と造る「家族がもっと元気になれる家」』(講談社+α文庫)他。