2013年01月30日更新
長期優良住宅・高知県O邸の例
長期優良住宅法をご存じだろうか。
住宅を長く住めるようつくることにより、
環境やコストの問題を改善、
真の意味でもっと価値が高く豊かな住宅を
ストックしていくために、2009年に施行された法律である。
認定されるための条件は、以下のようなもの。
・耐震性
・耐久性能
・維持管理・更新の容易性
・住戸面積
・省エネルギー性
・居住環境
・維持保全
評価機関、所轄官庁に長期優良住宅と認定されれば、
次のようなメリットがある。
・補助金
・住宅エコポイント
・住宅ローン減税他優遇税制
・フラット35S適用
少なくとも100年は住み続けられるほど丈夫で、
断熱性能などが高く、省エネルギーで暮らせる家は、
建てるときも建てた後もメリットがあるというわけだ。
そんな家の例として、今回は高知県のOさんの家を紹介したい。
5人家族で暮らすOさんの家は、設計、施工を
同県の矢野工務店http://yanostyle.jp/が手掛けた。
矢野工務店では、法律の施行以来の仕事は、
長期優良住宅を標準仕様としている。
認定基準を満たす高い耐久性、省エネルギー性をもつだけでなく、
地場産のヒノキやスギなどの国産無垢材や、自然素材を使うなど、
住んで気持ちのよい家をつくる。
また、できるだけ機械に頼らず、自然エネルギーを
取り込む設計を実践している。
たとえばこのO邸でも、太陽熱を暖かい空気に換えて家中に送る
パッシブソーラー「そよ風」を採用。
3階のロフト部分まで吹抜けになった開放感のある大空間でも、
このパッシブソーラーシステムのため、冬寒くなく、夏暑くないという。
矢野工務店ではそのほかに、
床置きタイプのエアコンを床下に半埋め込み型にする
「床下エアコン」の採用など、費用対効果の高い
冷暖房を提案しているという。
欧米諸国と比較し、使われる年数が半分程度と
著しく耐久性が低いとされてきた日本の住宅。
実は、耐久性が低い家ばかりだったわけではなく、
まだ住めるのに壊されてしまう家が多かったためだが、
それは戦後の高度経済成長期から続いた
住宅の量産の結果でもある。
政策が遅きに失した感は否めないが、
これからは長期優良住宅法が有効に機能し、
上質な住宅がストックされ、
長く住み続けられていく社会になればいいと思う。
次世代省エネ基準を満たす断熱性能やパッシブソーラーのおかげで、
家全体がひとつにつながる設計も可能に。
ロフトまで吹抜けになったリビングは、
親子のコミュニケーションにも一役買う。
- リビングジャーナリスト・「家の時間」編集主幹
中島早苗 1963年東京生まれ。日本大学文理学部国文学科卒。アシェット婦人画報社で12年在籍した住宅雑誌『モダンリビング』を始め『メンズクラブ』『ヴァンサンカン』副編集長を経て独立。約20年間400軒あまりの家と家族、建築家、ハウスビルダーなどへの取材実績を基に、「ほんとうに豊かな住まいと暮らし」をテーマとして、単行本や連載執筆、講演等活動中。著書に『建築家と家をつくる!』『北欧流 愉しい倹約生活』(PHP研究所)『やっぱり住むならエコ住宅』(主婦と生活社)『住まい方のプロが教えるリフォーム123のヒント』(日本実業出版社)『建築家と造る「家族がもっと元気になれる家」』(講談社+α文庫)他。