2013年02月27日更新
家でのおもてなし
家に人を招く、自宅で食事会をする。
不況の影響もあり、外食よりもお金がかからず、ゆっくりできる「おうちご飯」は
日本でもずいぶんポピュラーになってきたようだ。
その一方で、つい大袈裟に考えて
準備が億劫になり、「ウチではちょっと。。」と
敬遠する人も少なくないと思う。
家に人を招くか、そうでないかは、
家の大小やどれだけ豪華かなどによるのではなく、
単に「慣れているかどうか」で分かれる気がする。
家に気軽に人を招きいれ、
簡単なご飯やお茶などを振舞う、
あるいはポットラックのパーティにする。
家はそんな風にも使うものだ、と
思って実践している人は、苦にならないのだろう。
欧米の住宅にずいぶん取材に行ったが、
彼らにとってホームパーティは日常茶飯事だ。
私が見せてもらった例では、
よほどのお金持ちでない限り、外食にあまりお金をかけず、
気軽に家に集まるのを好む人の方が一般的だった。
しかもホームパーティといっても、
ご馳走たっぷりとか、華やかなイベントとは限らない。
以前、とある国の在日本大使館に勤める友人から
「今夜ウチでパーティをするから来て」と
呼ばれて行ったところ、全員が絨毯敷きの床に座り、
銘々がビールを片手にお喋りをしていた。
驚いたのは、料理らしきものが
見当たらなかったことだ。
夜の7時か8時で、お腹を空かせて行った私は
「食べ物は出ないのかな。。」と
落胆していたところ、宅配のピザが何台か届き、
皆でそれをつまんだのだが、
この出来事は私にとって
一種のカルチャーショックだった。
日本人だったら「家でパーティをするから」と
人を呼ぶ場合は、食べ物をある程度は用意する人が
多いのではないか。
その時私はハタと理解した。
日本人が「パーティ」という時、
特別なイベントを指すことが多いが、
欧米人にとってのそれは、「飲み会」のことなのだ。
つまりホームパーティは、家での飲み会。
人が集まってお喋りすることが目的なので、
缶ビールと、宅配ピザがあれば十分なのだ。
前置きが長くなったが、写真は
友人のNさんの家にランチに招かれた際に
撮らせてもらったもの。
年上の友人、Nさんは何年かニューヨークで
暮らしていたこともあり、家に人を招いて
食事を振舞うのに慣れている。
おまけに料理やテーブルセッティングが上手で、
この日は生地から手作りしたピザを焼いてくれた。
「私は人を呼んで食べさせるのが好きなの。
第一、家で食べたら安いじゃない?」と
明るく笑うNさん。
さすがだ。頭が下がります。
インテリアや絵を描くことも趣味で、
室内は素敵にしつらえられていた。
Nさんはおもてなし上級者であるが、
Nさんほど完璧な腕前でなくとも、
家に招かれるのはやっぱり嬉しい。
血縁、親戚と行き来することが減った
核家族社会では、こうした友人の
アットホームなおもてなしは有難く、
身も心も温まるものだ。
ランチのテーブルセッティング。たっぷりの手作りピザに、客人がそれぞれ持ち寄ったワインやデザートを合わせて。
室内にはNさん自作の絵が掛けられて。吹き抜けで広々としたリビングとは対照的に、
小ぢんまりとコージィなダイニングルーム。
- リビングジャーナリスト・「家の時間」編集主幹
中島早苗 1963年東京生まれ。日本大学文理学部国文学科卒。アシェット婦人画報社で12年在籍した住宅雑誌『モダンリビング』を始め『メンズクラブ』『ヴァンサンカン』副編集長を経て独立。約20年間400軒あまりの家と家族、建築家、ハウスビルダーなどへの取材実績を基に、「ほんとうに豊かな住まいと暮らし」をテーマとして、単行本や連載執筆、講演等活動中。著書に『建築家と家をつくる!』『北欧流 愉しい倹約生活』(PHP研究所)『やっぱり住むならエコ住宅』(主婦と生活社)『住まい方のプロが教えるリフォーム123のヒント』(日本実業出版社)『建築家と造る「家族がもっと元気になれる家」』(講談社+α文庫)他。