港区白金台にある、ヴィンテージマンションのデザイン・リフォーム事例を紹介いたします。築26年（リフォーム当時）の外国人向け分譲マンションにお住まいのクライアントからのご要望は、お子様たちが家を出たことをキッカケで、大好きな現代アートを飾れるギャラリーのような住宅にしたいとのお話でした。

　子ども部屋が一つ不要になったので、その分リビングダイニングとキッチンを広げる形で、 間取りは比較的容易に決まったのですが、一番難しいポイントは「どのように現代美術を飾るのか？」でした。古い絵画と違って、新しい美術作品は彫刻と絵画の中間のようなものから、意味不明のナゾの物体（失礼？）まであり、ただ白い壁を用意すれば良いという訳ではありませんでした。

　そこで参考にしたのが、日本古来の住宅にあった床の間でした。床の間には掛け軸も飾れば、床板にはお茶碗や季節のものを置きます。使い方によって色々とシーンが変化する便利な装飾用のスペースから、リフォームのアイデアを取り入れました。ただ、普通のサイズの床の間では狭く、和風のインテリアになってしまうので、十分に幅が広く、塗装で塗りこんだ抽象的な床の間風空間としました。床からは段差を付けて、床板風に白拭き取り塗装の板を入れて、フレームで枠取りしたような形に落ち着きました。

　このマンションはコンクリートラーメン構造（柱と梁と床で構成される構造）だったので、リビングに出っ張った形で出てきた二つの柱を枠と見立て、却って中央部分が凹んでいるようなしつらえができました。長かった廊下の途中にもキッチンの無駄なスペースを活用し、ニッチを設けギャラリー風の廊下に変えています。

　従来はカーペット敷きだった床には、ＬＬ45をクリアする防音材を敷いた上で、チークの無垢フローリングを張りました。ビニールクロス仕上げの天井と壁も画廊のようにペンキ塗りの塗装仕上げに変更しています。全体的な設備も老朽化していたので、マンションを骨組み（スケルトン）状態にまで解体してからのリフォームとなりました。隠れた部分の配線・配管の交換から、キッチンの刷新に加え、床暖房も加えました。併せて、照明計画も一新し、トラックを天井の凹みに仕込んで、自由に調節しながらアートを照らせるように改変しています。

　古くからのヴィンテージマンションならではの苦労も多々ありました。マンションの管理規約がきっちりしており、工事の時間帯や音出し作業の制限が厳しく、近隣へのご挨拶や共用部分の養生など、気を使う部分が多くありました。当初、電気で賄おうと想定していた床暖房も、電気容量の制限からガスに変更となり、床の段差が生じるなど、現場で細かく対応することになりました。

長い廊下の途中にも現代アートを飾るスペースを設けました