2013年07月17日更新
リフォーム 床材の選び方
住宅をリフォームする際の素材選びで、最初に突き当たるのが床材選びではないでしょうか?フローリングがここ数年主流となっていますが、カーペットの肌触りが譲れない方も、タイルや石の硬質感が好きな方もいます。和室に限られがちですが畳という選択枝や、コストとメンテナンスに優れたビニール系のシート材、断熱性とクッション性に富んだコルクなどのチョイスもあります。
一番人気のフローリングですが、素材や内部構成によって全く違ったものになります。最もポピュラーなのが、複合フローリング。表面に木材を薄く削いだ板を敷いて、その裏地にはベニヤ材を張ったような製品です。木目のムラが少なく耐久性も高く、かつコストも安価なので人気が高いものです。ただ、表面が傷つきにくいようにUV塗装などでコーティングされた複合フローリングは、本物の素材感を重視する人にとっては、偽物にしか感じられません。無垢フローリングは、正に本物の素材そのもので、厚みの分だけ重厚感を感じることができます。ただ、複合フローリングが業界を席巻している日本では、残念ながら無垢のバリエーションはそれほど豊富ではありません。両者の良いところを合体した三層フローリングというものもあります。表面の単板が2ミリ程度あって、本物感がありながら、幅広や長い材も取りやすく、価格も無垢に比べれば安価というメリットがあるので、うちの事務所で最もよく使うフローリング材です。
寝室などのプライベートの空間では、いまだにカーペット派の方も多いようです。素足で歩いた時の柔らかさや温かさ、転んだり、物を落しても壊れないクッション感などが理由のようです。こちらもフローリングと同じように、素材やカット・パイルの種類、敷き方でバリエーションが豊富です。一時、カーペットがダニの発生源と言われて敬遠されましたが、素材や掃除の仕方で問題なく使用できるようになってきました。その他の素材にも、それぞれメリット・デメリットがあるので、良い点だけでなく問題になりそうな点をより注意深く研究する必要があります。
床素材を選ぶ際のポイントとしては、①触感、②インテリア性、そして③適材適所の3つの観点で考えることをお勧めいたします。「触感」については、暑い夏に選ぶと、ひんやりした石やタイル、爽やかな足心地のフローリングが人気ですが、冬には肌寒く感じるので、オールシーズンで自分や家族の暮らすイメージを想像する必要があります。「インテリア性」は、好きなインテリアのイメージ写真を見比べて選ぶことになりますが、写真やカタログでは同じように見える製品でも、素材感や表面のテクスチャーが違うと、全く違ったものになるので、サンプルを取り寄せてから判断することをお勧めします。小さいサンプルでも、広い面積を張った時のイメージは付きにくいものですし、張り方やサイズの違いも大きな影響を与えるのでプロの設計者やデザイナーにアドバイスして貰った方が安心でしょう。「適材適所」については、水でぬれがちな洗面所やトイレにカーペットを敷く方はほとんどいませんが、それぞれ素材に適した空間、使えない空間があるので、カタログやインターネットの情報をきちんと確認したいものです。
以上に加えて、リフォームでは④残す床材と張り替える床材の範囲、そして⑤床段差の有無についても注意を払う必要があります。全てを張り替えるのではなく、部分的に張り替えるだけでも、その部分がアクセントとなって、空間をガラリと変えることも可能です。リフォーム後の「段差」については、どこまで下地を解体するかによって変わってきます。カーペットを遮音下地を付けたフローリングに張り替えた場合は、確実に段差ができてしまいます。費用と天井高さに余裕があれば、下がる部分を嵩上げしておけば良いのですが、そうできない場合は緩いスロープを作ったり、段差の視認性が高まるように素材の色等を変えて、つまづきにくい工夫をすることになります。早めの段階で段差が生じるかどうかをリフォーム屋さんに確認しておきたいものです。更には、マンションリフォームでは、⑥遮音性能ついても注意が必要です。これは管理規約を確認すれば判りますが、使える材料や工法に制限もありますので、早めにチェックをしておきたいポイントです。
その他にも、フローリングの張り方向を変えたり、大理石の床に大きなラグを敷いたり、カーペットの縁にフローリングを敷いたりといった応用でも空間の雰囲気は大きく変わります。床材が決まってから、壁と天井、建具などの素材を決めてゆくのがインテリアデザインの流れとなることが多いので、インテリアを決める第一歩として慎重に考えることをお勧めいたします。
三層フローリングのディテール。表面張りのオーク材は厚みが2.5ミリある
既存床の白い大理石は残し、汚れていた目地はクリーニングした。
ソファ周りには大きめのラグを敷いて、居心地感をアップさせた
主寝室の床はウール100%のカーペット敷きに。素足でいる時間がほとんどの寝室では脚触り感のよいカーペットが人気だ
ヘリンボーン張りフローリングの施工中の様子。フローリング張りのエリアが広いケースでは、
このように張り方を変えて、変化を持たせることも
玄関ホールでは大理石張りも人気。白いタタキ部分は既存で、
周囲のフローリング部分を灰色の大理石張りに変更した。
厚みの違いを解消するために、張り替えた部分は床下地からのやり直しとなった
- 建築家
各務 謙司 (カガミ ケンジ) 1966年東京都港区生まれ。早稲田大学大学院終了後、ハーバード大学大学院に入学。留学修了後、94年にニューヨークのCicognani Kalla設計事務所勤務。マンハッタンの高級マンションのリノベーション、郊外の別荘等を担当する。帰国後、生まれ育った白金台に設計事務所を開設。古くなった建物にリフォームで手を加え、住まい方にあわせカスタマイズし、生き返らせることを活動の一つの柱としている。
カガミ・デザインリフォームhttp://www.kagami-reform.com/