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建築家リフォーム

2014年03月24日更新

ソファーとダイニングテーブルのレイアウトについて

最近お手伝いしているリフォームプロジェクトでは、建物・空間のリフォームに留まらず、内部に置く家具やアート、調度品や小物、カーテンやラグの選定までお手伝いするケースが増えています。もともとが建築設計出身なので、インテリアは勉強中の身でしかないのですが、今回はどのように家具を選んでゆくかについて説明してみます。あくまでの自己流ですので、インテリアの教科書と違う箇所が多いと思われますが、そこはご容赦ください。
まず、家具の中心、そして住み手家族の中心となる二つの家具、ソファーとダイニングテーブルの位置関係から考え始めます。リビングとダイニングが一体になっている空間へとリフォームする例が多いのですが、どこにソファーをレイアウトするか、ダイニングスペースのどこに食卓を配置するかが最初で最大の問題になります。ソファーを置く場所を決めるうえでのポイントは、1.窓から見える景色との関係、2.空間の広がりとの関係、3.テレビ(稀に暖炉)を置く位置との関係、4.玄関ホールや廊下からLDへの動線との関係から、幾つかのレイアウト方法から考えてみます。1と3は背反する要素で、景色を優先するとテレビは見にくくなり、テレビの見やすさを重視すると折角の窓からの景色に背を向けてしまうことになりがちです。L字型のソファーやニの字(並列)型使って、両方を眺められるスタイルを考えます。壁の位置と動線の関係も重要で、壁を背にしてソファーを置くのか、壁に対してソファーを置くのかは、玄関・廊下からLDに入ってくる動線との関係で考えてゆきます。部屋に入ってすぐにソファーに座っている人と正対することは、座っていても落ち着きを感じられませんし、空間としても品が感じられないので、生活するシーンを考えながら視線をずらす工夫をしてゆきます。

幾つかのソファーレイアウトができたところで、今度はダイニングテーブルの適切な位置を考えて行きます。テーブルの位置を決めるうえでのポイントはA.キッチンとの関係、B.動線との関係、C.窓との位置関係、D.リビングとの位置関係となります。オープンキッチンのお宅であれば、カウンターに面した場所にテーブルを持ってゆきたくなりますが、却ってキッチンからの配膳動線が悪くなることもあるので注意が必要になります。キッチンの位置が決まっていればダイニングのレイアウトは比較的スムーズなのですが、全面リフォームの場合はキッチンの位置もダイニングを考えながらレイアウトするのでなかなか決め手がありません。キッチンからダイニングへの動線が少し変わるだけでダイニングでの食卓の位置が変わってくるので、キッチン単独での使い勝手だけでなく、ダイニングとの関係を見つめながらキッチンを考える必要があります。とにかく、リビングとダイニングのどちらを窓に近く置くかの決まりはありませんし、玄関からの扉の近くにどちらを置くかの定石もないので、ここは設計者の生活感や空間構想力に大きく掛かってくる部分なので、他の人が作ったリフォームプランを見る際にもソファとダイニングのレイアウトを見れば、デザイナーの力量が見えてくるものだと思っています。

窓が一面で、長方形の形をしたLDだと、自然にキッチンが窓から遠くに来ることが多いので、窓際から順にリビング、ダイニング、そしてキッチンとなりますが、窓が2面あって正方形なLDKでキッチンのレイアウト位置も自由だと、レイアウトの難易度は上がります。少しの寸法の違いで、ダイニングテーブルの位置が決まらない場合には、丸型のテーブルを使うことで問題が解決することがあります。ソファーも直線型かL字型を基本としますが、ニの字(2本並列)型を考えることで、しっくりした落ち着いた空間になるケースもあります。それでも決め手がない場合は、天井や壁のデザインを変えて、空間に意図的なメリハリをつけて、リビング空間とダイニング空間の棲み分けを作ってしまうケースもあります。
空間が狭いことで、ソファーと食卓がせめぎ合うことは考えやすいでしょうが、過度に広くなった場合でも両者のレイアウトがぎこちないと不自然で落ち着きのない空間になりがちです。ソファーでテレビを見たいのか、食後に落ち着いて家族で話し合いたいのか、ダイニングは食事オンリーなのか、子どもの勉強を食卓でやらせたいのか、その家族ごとのライフスタイル毎にソファーとダイニングテーブルの位置関係があるので、そこで暮らす人たちのライフスタイルを十分に聞き取っておくことも欠かせません。計画を練ってゆく中で、いかに多くのレイアウパターンを考えて、その中から最も自然に感じる配置計画を見つけ出すかが、ソファーとダイニングレイアウトの鍵になると言えるのではないでしょうか。




生活のシーンをお客さまにも考えて貰う上では、このような立体的なスケッチも有効。キッチンで作業中にダイニングで勉強する子供の様子を見るイメージが掴みやすい




キッチンからの動線と玄関からの動線が重なった難しいレイアウトパターンでは、ダイニングに円卓を使って、動線の流れをスムーズにした


正方形のLDは配置が難しいパターンの一つ。この事例では、天井に段差を設けて下がり天井の下にダイニングを置くことで、しっくりと来るレイアウトができた


キッチンの出入り口とソファとダイニングテーブルのレイアウトをラフスケッチしながら考えている作業用ドローイング


最終的にお客さまにプレゼンテーションしたリフォームプラン。まだソファーとテレビの位置関係がしっくりきていないので、お客さまの意見を聞きながら、レイアウトも変更してゆくことに




建築家
各務 謙司 (カガミ ケンジ)
建築家 各務 謙司

1966年東京都港区生まれ。早稲田大学大学院終了後、ハーバード大学大学院に入学。留学修了後、94年にニューヨークのCicognani Kalla設計事務所勤務。マンハッタンの高級マンションのリノベーション、郊外の別荘等を担当する。帰国後、生まれ育った白金台に設計事務所を開設。古くなった建物にリフォームで手を加え、住まい方にあわせカスタマイズし、生き返らせることを活動の一つの柱としている。
カガミ・デザインリフォームhttp://www.kagami-reform.com/

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