2014年08月20日更新
ガラス・鏡・カラーガラスの効果的な使い方
仕事の内容を高級マンションのリフォーム・リノベーションに絞ってから、よく使うようになった素材として、①大理石、②ガラス&鏡、③鉄・ステンレスが挙げられます。すべて硬質感があって、光を反射するとキラリと光る特徴がある素材ですが、これには一つ大きな理由があると考えています。中古マンション(稀に新築もありますが)を購入してリフォームを考えるクライアントは、マンションを探す際に新築もターゲットに入れて探すケースがほとんどです。そうなると新築のショールームを訪問したり、販売用カタログを手に入れて研究なさっている方が多くいらっしゃいます。高級なマンションには、グレード感を感じられるエントランスやロビーが常設されており、そこにはふんだんに大理石やガラスが使われています。ハイグレードマンションの常識である中廊下型のマンションであれば、その構成上、玄関には自然光を入れることが難しいため、専有部の玄関ホールにも、照明の光を受けてキラリと輝く大理石や鏡が多用されています。そういった新築マンションの空間性を、そのまま中古マンション内部に再現したいとのご依頼はありませんが、両者を比較して、中古マンションに欠けているのは華やかさだと指摘されることは多々あります。
大理石と鉄・ステンレスについては、また別の機会に譲るとして、今回はガラスと鏡とカラーガラスについて説明したいと思います。カラーガラスとは聞き慣れない素材かもしれませんが、板ガラスの裏面にカラフルな塗料を焼き付けたガラスの一種です。鏡も同じように板ガラスの裏面に銀膜を吹き付けたものなので、広義で考えるとカラーガラスの一種類といってもよいかもしれません。
ガラスは戸建て住宅でも外部と内部の境界の窓として多用されますが、インテリア素材として使うと、抜群に透明感と硬質感を演出してくれる素材です。二つの用途の違った部屋の間仕切りとして使うと、それぞれの部屋の明るさに応じて時に透明に、時に反射しながら、二つの空間の境界を曖昧に作りあげてくれます。内部空間に外部的な空間が生まれたり、更なる内部空間が生まれたかのような効果が生まれます。鏡・ミラーはもの自体を映り込ませることで、全てがダブルに増幅される効果はだれでも知っているものでしょう。ただ、玄関の姿見や洗面所の鏡など、自分を映す機能がほとんどで空間的に有効な使われ方はあまりされていません。窓際にある柱型に沿って張れば、窓が長く続いているように感じられますし、梁型に合わせて張れば、天井がどこまで伸びているかが判らない錯覚を利用することが可能です。より高度には、建具や造作家具とラインを合わせたり、空間の分節面に張ると、広がり効果がより効いてきます。カラーガラスは、空間を演出するうえで、さらに力を発揮してくれる素材です。ガラスや鏡のように反射しながら、光の加減によって、奥にある色を浮かび上がらせてくれるので、不思議な奥行き感がある壁を作ることが可能です。それぞれの魅力を言葉で表現するのは非常に難しいので、各事例の写真を見ていただければ幸いです。
スチールの枠にガラスが入る前と入った後を比較した
ビフォー&
アフター写真。ガラスは透明なだけでなく、
反射したイメージも映し込むことで、二重の奥行き感を感じさせる
トイレの背面壁に使った茶色のカラーガラス。大理石とカラーガラスは
硬質度と色の深みがマッチするので、同時に使うと効果的
廊下正面には深みを演出するカラーガラス、リビングへの扉にはスチールサッシに入ったガラス、天井は照明と一体化した黒いカラーガラスと三次元的にガラスを使った演出
ウォーク・スルー型のクローゼットの内部壁に張った鏡とガラスの間仕切り扉。鏡に映りこんだ背部にはガラス扉越しに洗面が映りこんでいる
横長の鏡を使って狭さを感じさせないトイレの工夫。鏡の幅を、正面の壁に埋め込んだ収納
ボックスと合わせることで、錯覚を感じさせている
- 建築家
各務 謙司 (カガミ ケンジ) 1966年東京都港区生まれ。早稲田大学大学院終了後、ハーバード大学大学院に入学。留学修了後、94年にニューヨークのCicognani Kalla設計事務所勤務。マンハッタンの高級マンションのリノベーション、郊外の別荘等を担当する。帰国後、生まれ育った白金台に設計事務所を開設。古くなった建物にリフォームで手を加え、住まい方にあわせカスタマイズし、生き返らせることを活動の一つの柱としている。
カガミ・デザインリフォームhttp://www.kagami-reform.com/
記事はありませんでした