2010年09月22日更新
安曇野ノオト 初秋号
安曇野は豊穣の時を迎えました。めっきり肌寒くなった夕刻に冴え冴えした空に輝く星を眺めながら虫の声を聞くと、暑かった夏も過ぎて行く季節の一つと思い、なぜか心さびしい思いがします。
しかし稲田は収穫の時を迎え黄金色。秋蕎麦の白い花との対比も美しく、リンゴ園のリンゴも赤く色づき始めました。森を歩けばいろんなキノコが・・・冬が来るまでの豊かで彩り豊かなシーズンの幕開けです。
アート&クラフト関連もあちこちで作品展やイベントが開かれて、暑い夏に耐えて創作を続けた作家たちの作品が世に出ます。
美術館クラスの催しから、小さなギャラリーの作品展、気持ちのいい野外イベント、バザーと形態もいろいろ、出展者は美術界の重鎮から新進気鋭の若手作家まで・・・
そんななかである地方の伝統工芸品を使った異ジャンルによる作品展が安曇野の隣大町市で開かれています。
発起人は30歳のフエルト作家。
たまたま出会った地元の手漉き和紙の美しさに惹かれて新しい視点で活かせる方法はないかと思い模索。
日本を代表するグラフィック工芸家、安曇野周辺の名店の玄関を飾るのれん作家、売り切れ御免の人気バッグ作家、絵付け、手織りの大家、独特の世界を展開する絵画作家、鉄工芸家、手芸家に”muku 無垢 囚われず 固まらず 自由に 真っ白い気持ちで” というお題を示し作品出展を依頼しました。
忙しい中、若い彼女の無謀ともいえる投げかけに乗ってくれたのは、それぞれの作家の現状にとどまることなく新たなものに挑戦し、楽しもうとする柔軟な気持ちと、モノづくり人の魂の若さだと思います。
地元を愛し、そこで育まれた歴史あるものを誇り、活かし、次世代に繋げたい、そんな若者の無垢なる思いと、その気持ちに応えた作家たちの気概が結実した清々しい作品展です。見せるだけではなく、手漉き和紙の持つ力や可能性を提示し、生活の中での活かし方、簡単な利用法も提案しています。
日本の良さ、美しさ、手仕事の素晴らしさが沢山の人に伝わり、繋がればいいなと思いました。
そんな作家たちの瑞々しい感性の作品展は、大町の古民家レストラン兼ギャラリーわちがいで開かれています。
期間は秋の深まる10月11日まで。詳細レポートはこちらで。
- 宮嶋洋子プロフィール
- 関西出身、産業福祉を専攻後、保険会社勤務。結婚を機に信州白馬山麓に移住。夫とロッヂを経営。夫が鉄工房Eisenを立ち上げると共に安曇野に移転。自らは羊に関わる紡ぎ、織り、編みのクラフトを楽しむ。
鉄工房Eisen:http://www5.plala.or.jp/Eisen/