2010年04月14日更新
春の歩き方と楽しみ方
2回目の掲載の今回は、周辺の風景について少しご紹介しましょう。
春の訪れの遅い那須。
数週間前までなごり雪に埋もれていた土の中のもぐらや虫たちがやっと起き始め、ふきのとうが地面から顔を出し、牧草地には早春に咲く「オオイヌノフグリ」が咲いている。これから春告げ鳥のウグイスの初音が聞かれるようになり、梅に続き桜が咲き始めるのは毎年4月中旬〜下旬の頃となる。
「素楽」soraは那須連山の麓に緩やかに広がる標高600mの酪農地帯にあり、牧草地が一面に広がるとても牧歌的な土地にある。
戦後、開拓者の方々が開墾し、標高が高く、その冷涼な空気が牛の飼育に適し、酪農が栄えた地域で、その風景が北海道に似ていることから「ミニ北海道」と呼ばれることもあり、北海道が設定のドラマやCMなどの撮影も行なわれる。
ちなみに、あまり知られていないことだが、栃木県は北海道を除いて牛乳の生産量が日本一。那須町の農産物産出額の1位は生乳。周辺の牧場で搾乳された生乳で作られた新鮮な牛乳や乳製品は、直売所やスーパーマーケットで購入することができる。
そんな那須の中でも最も酪農が盛んなエリアなのである。「素楽」soraが建つ場所も以前は牧草地で、「那須とログハウスの風景」のタイトルの入った写真の手前に広がるのも牧草で、春から晩秋にかけて緑が生い茂る。
春になると、今まで吹いていた北風に変わり南風が吹くようになる。冬の間、痛いほどの冷たい北風に吹かれ続けた体は、この暖かな南風にはかなり敏感に反応する。この春風を感じると、冬の間ちぢこまっていた背筋もピンと伸びて、血液が体内の隅々にまでちゃんと流れて行くような感覚を覚え、身も心も春色に染まる。
でも、この時期の那須ではちょっと油断するとまた真冬の寒さに逆戻りなんてことがよくあるから、厚手の洋服やストーブがなかなかしまえないのは、毎年困りものだけど。東京生まれの私は、那須に引っ越してきた翌年の春、もう寒くなることはないだろうとさっさと衣替えをしてしまい、その後寒くなり、着るものがなくて困ったことがあった。
春の散歩は、まだ時折冷たい北風が肌を刺すが、生き物たちの目覚めを感じたり、植物の芽吹きを新たに発見した時には心が弾んで足取りも軽快になる。この時期の那須ではまだ観光客もまばらで、車も比較的少ないので、どこへ行ってものんびりと愛犬とともに春の散策を楽しむことができるのもいい。
また、毎年春にスタートすることといったら庭作業。この時期、冬枯れの庭では眠っていた植物たちが次々に新芽を出す。春が過ぎ、夏がやってくる頃、庭では我が物顔のたくましすぎる雑草に手を焼き、繁忙期と重なって次第に手に負えなくなり、毎年夏が終わる頃にはギブアップしてしまう庭作業。その厄介者の雑草たちのはびこる前の春の庭作業は、多大な労力を費やす草抜きをしなくていいし、虫も少ないのでとても楽しい。
「確か昨年はこの辺りに山百合が咲いていたから、今年も出てきてくれるのだろうか?」「ここはちょっと淋しいから今年は何か植えようか。」「この木は大きくなりすぎたから今年は剪定しよう。」などと考えながら陽春の庭にいる時間は、寒い冬を越したご褒美の贅沢な時間なのかもしれない。
春になると、冬眠状態だった私にもそろそろ充電完了のサインが点灯し始める。春の命の息吹を五感で感じながら、冬の間蓄えておいた脂肪のついた重い腰を上げて、明日から庭作業にでも取りかかるとするか。
- 堀田はるみプロフィール
- 東京都出身。日本ハウズィング(株)に10年勤務後、大和ライフネクスト(株)(旧(株)コスモスライフ)に5年勤務。在職中に宅地建物取引主任者、管理業務主任者資格取得。2003年宿の開業とともに栃木県那須町に移住。現在は那須の大自然を楽しみながら夫と犬と暮らす。
ハンドカットログハウスの宿「素楽」sora:http://www.ayado.com/