2010年02月17日更新
休日はマルシェへ
皆様、はじめまして。カオリです。今月より友人のアリオちゃんと交代で、パリでの日々の暮らしをお届けしたいと思いますので、どうかお付き合いください。
さて、1999年にパリに移り住み、はや10年がたちました。最初は本当に右も左も分からずとても辛いものがありました。10年たった今、じゃあパリに詳しくなったのかといわれると、そうでもないのが、これまたとても辛いところです。
パリの日々の生活をなんて冒頭にえらそうなことを書きましたが、私の日々の生活とは、毎日仕事に追われ、平日は、アパートと職場の往復のみ、週末は、アメリカへ飛んでるか、疲れ果てて、家で寝ているか、あまりに疲れ果てた身体をいたわるべく、鍼灸に通うかなんていうそんな生活です。なので、どこまでお話できるネタがあるか、かなり不安になりながらのスタートです。
そんな、ほぼパリに生活がない私の日々ですが、少しパリっぽいことをしているといえば、毎週日曜日の朝に、近所の市にでかけること。「マルシェ」と呼ばれるこのような市は、パリの道沿いや広場、電車の高架下などで日曜日によく開催されます。私の家の近所の市はラスパイユ通り沿いに開かれる「ビオ・マルシェ」とよばれるもので、有機食品(ビオ)を売っていることを売りにしている市です。
そもそも、まったくパリに疎い私は、家のすぐ近所あるこのパリではそこそこ有名な「ビオ・マルシェ」の存在を全く知りませんでした。ところが、ある日、来月、このページを担当するアツコちゃんに「ビオ・マルシェ」に一緒に行こうよと誘われたのです。最初は「ビオ・マルシェ」という名前から、これまた家の近所にある、パリで有名なデパート、「ボン・マルシェ」と少し混同し、市とは全く思わず、なんかのお店だと勘違いしていて、アツコちゃんに驚かれた私。
こんな私が、なぜ「ビオ・マルシェ」に通うようになったかというと・・・仕事が忙しくなったので、これまでのように、お昼に職場の近所のレストランに出かけて、ゆっくりとランチを楽しみということが難しくなってきたのは、かれこれ一年前。かといって、職場の中にあるカフェテリアの食事は、いつも同じ感じのソースたっぷり、こってり系。
しばらくは、これまた職場の中にあるコーヒーショップでサンドイッチ(フランスパンを半分に切って、バターをぬってハムやチーズをはさんだもの)を食べていたんだけど、これまた、だんだん飽きてきて見るのもいやな状態に。ということで、ランチの時間になっても食べたいものが全く思い浮かばず、途方にくれ、手元にあるポテトチップスで空腹をしのいで仕事をするという日々が続き、さすがにこれはまずいと思ったわけです。やっぱり、健康第一。ということで、一念発起してお弁当を作ることに。
といっても、えらそうに威張れるものでもなく、いつも適当に食べてた夕食をちゃんと料理して食べることにして、その残りをお弁当箱につめてるだけですけど。しかし、料理をするとなると、平日はスーパーの空いている時間に帰宅できないことも多いし、土曜日は疲れていて外に出たくないし。かといって、日曜日はパリのほとんどの普通のスーパーは閉まっているし。ということで、苦肉の策の「ビオ・マルシェ」なのです。
ところが、これ、はじめてみるととても楽しいことを発見。まず、日曜日、もちろん朝起きると、「めんどくさいな~、行きたくないな~」と思うんだけど、いかんせん、冷蔵庫は空っぽで食べるものなし。こんな切羽詰った状況に背中を押され、しぶしぶ出かけるわけです。
でも、しばらく歩いていると、散歩しているような楽しい気分になってきて、マルシェにつくころには、既にとってもいい気分。そして、道の左右の八百屋さんやチーズ屋さんなんかをのぞきながら歩き、マルシェの奥のほうにあるいつもお野菜を買うお店にたどり着いた頃には、買いたい野菜もほぼ決まり、気分は最高潮。そして、帰宅後は、日曜日にわざわざ服を着替えて外に出かけるという大業を成し遂げた達成感につつまれて、お昼寝するわけです。こういうのを、ささやかな幸せというのでしょうか。
- カオリ・有緒(アリオ) プロフィール
- *カオリ
早いものでパリでの生活、11年目に突入。毎日、セーヌ川左岸にある職場と家の往復のみで、いまだにマレ地区に足を踏み入れたことさえないくらいのパリ音痴。アメリカに暮らす夫と遠距離結婚中。*有緒(アリオ)
ほんの1、2年ほどのつもりが、気づいたら6年目近くにも及ぶパリ生活。日本では考えられないようなトラブルに日々見舞われながらも、のほほんとした毎日。住んでいたのはサンジェルマンデプレといえば聞こえがいいだけの、築二百年近い古びたアパルトマン。趣味は、友人に料理を作ることと、アンティーク家具や骨董品などのガラクタを買うこと。 最近、東京に拠点を移しましたが、まだパリと行ったり来たりが続きます。最近初の著作となる「パリでメシを食う。 (幻冬舎文庫)」を出版しました。