2010年04月21日更新
あぁ、家の中で雨が降る
こんにちは、カオリです。先月、アリオちゃんがパリのアパートには新建築と旧建築があるという話をしていましたが、私は車の駐車場が必要なこともあって、地下に駐車場のある新建築に住んでいます。しかし、ここ数ヶ月、「この建物は本当に新建築ですか?」というようなありえない出来事に遭遇し、振り回されているのです。
事の起こりは、2ヶ月ほど前。朝、起きてバスルームで出かける用意をしていると、「ポツ・ポツ・ポツ」と雨の振る音がどこからともなく聞こえてくるのです。外を見ても雨が降っている気配はないし、この音はいったいどこからと思いきょろきょろと探してみても見当たりません。まさかとは思いながらバスルームの中にある小さいクローゼットを開けてみると、なんと、まるで雨が降っているかのように天井から水がザーザーもれているではありませんか。
人間、ありえない出来事に遭遇すると頭の中が真っ白になってしまって、まったく動けなくなるものです。しかし、なんとか気を取り直し、というか半狂乱になりながら、クローゼットの中のものを外へ放り出し、バケツやお台所のボールなどを探し回り、なんとか水を受けたものの、床も、クローゼットもそして私もずぶぬれで、本当に朝から踏んだりけったりです。
途中から水漏れが止まったのもあってその日はそのまま出勤して、職場の同僚に「ちょっと聞いてよ~。これこれこうで」というと、「あっ、私も何年か前にあって、本当に大変でホテルで泊まらないといけなかったのよ」とか、「僕なんて、今のアパートで三度目の水漏れにこの前あってね~」。そうなのです。フランスでは水漏れは日常茶飯事。周りの同僚や友人で水漏れに会っていない人を探すほうが大変なくらいなので、パリに住んで10年、私が今まで水漏れに遭遇しなかったことのほうが奇跡だったのでしょう。
さて、なんと言っても、水漏れ初体験。しかも、水漏れ用のフランス語の語彙もあまりないので、いったいどこから手をつけてよいのかもわかりません。親切な同僚に一から教えてもらい、彼の指示に従って、早速、保険会社に連絡をとり、上の階に住んでいる御近所さんにメモを残し、アパートの管理会社に連絡をとりと大騒ぎ。
その後、またまた大変なのが、大家さん、保険会社の被害鑑定人、大家さんが依頼した水道屋さん、管理会社が手配した被害鑑定人等、いろいろな人が次から次へと、私のアパートにやってくるのです。もちろん、ここは、フランス。土・日に来てくれるわけもなく、かといって私は平日は仕事をしているので、アポイントメントをお昼休みにしてもらい、ランチも食べずに猛ダッシュで家に帰り、アパートの点検等に立ち会って、また職場にとんぼ返りということを繰り返すはめに。もう、へとへとです。
結局、上の階のお風呂の配管が壊れていたのがこの水漏れの原因で、それは修理してもらったんだけれど、それ以外にも、最近、トイレとバスルームの壁がはがれはじめているな~と思っていたら、実はトイレの裏に通っている配管からも水がジャージャー漏れていること、そして、バスルームの屋根の水はけ用のチューブも詰まっていて、屋根の水が全くはけていないことが判明しました。
保険会社が、壁の塗り替えをしてくれるとのことなんだけれど、それも、まず配管の修理をして壁が乾くのをまってそれからしかできないということなので、いつペンキを塗ってくれるのかは未定。その間にも、壁の状態はどんどん悪くなっていくし、まだまだ長い道のりが待っているのです。繰り返しますが、私のアパートは「新建築」です。
さて、この水漏れ騒動、日本では本当にありえない話です(ですよね?)。この話を夫にした際の反応をみても、アメリカでもありえない話なんだろうと思います。でも、フランスでこの話をすると、10人のうち10人が、「あら、あなたも?」という反応をするのです。もちろん、みんなもそれぞれに怒っているんだけど、そこに漂う雰囲気は、「まあ、しかたないよね」っていう大自然を前にして人間の非力を思い知るっていうようなそんな感じなのです。なので、私もとんでもない大事件に遭遇したように大騒ぎしているのが、だんだん馬鹿馬鹿しくなってきて、「まあ、パリだししかたないか」とあきらめの境地に。そうです。パリに住んで10年。これで、やっと私もパリの洗礼を受けたということでしょうか。
- カオリ・有緒(アリオ) プロフィール
- *カオリ
早いものでパリでの生活、11年目に突入。毎日、セーヌ川左岸にある職場と家の往復のみで、いまだにマレ地区に足を踏み入れたことさえないくらいのパリ音痴。アメリカに暮らす夫と遠距離結婚中。*有緒(アリオ)
ほんの1、2年ほどのつもりが、気づいたら6年目近くにも及ぶパリ生活。日本では考えられないようなトラブルに日々見舞われながらも、のほほんとした毎日。住んでいたのはサンジェルマンデプレといえば聞こえがいいだけの、築二百年近い古びたアパルトマン。趣味は、友人に料理を作ることと、アンティーク家具や骨董品などのガラクタを買うこと。 最近、東京に拠点を移しましたが、まだパリと行ったり来たりが続きます。最近初の著作となる「パリでメシを食う。 (幻冬舎文庫)」を出版しました。