2012年08月29日更新
トロント≒トロント大学(その1)
トロントのダウンタウンの真ん中にはトロント大学、通称UofTがある。創設は1827年。多くの歴代カナダ首相やノーベル賞受賞研究者を排出している北米屈指の名門大学だ。トロントは文字通りの学園都市で、大学と町にはっきりとした区切りがなく渾然一体としている。たとえばキャンパスの目抜き通りを町中を通るのと同じ道路がそのまま縦横に走り、オンタリオ州議事堂や王立オンタリオ博物館も大学エリア内。一方で大学から離れて町中だとばかり思っていた場所にも、大学の校舎が建っていたりする。そもそも約2.8㎞の広大な敷地には200以上の建物やグランドがあって、ひとつの街よりも大きいくらいだ。
そしてトロント大学のランドマークが、450万冊以上の蔵書を誇る図書館・ロバーツライブラリー。いかつい要塞のようなブルータリズム建築だけれど、これでも白鳥がモチーフ。中は14のセクションに分かれていて迷子になりそうに複雑な造り。外から見ても分かる通り、ちょっと角張ったブドウの房のようなポコポコ飛び出した部分があって、何度行っても入り組んだ造りのどこかに迷い込んでしまう。
その一角の、中でつながっているのか外の入口からしか入れないのか、ことさら秘密の小部屋ふう(という規模ではない)なのがトーマス・フィッシャー・レアブック・ライブラリー。ここはシェークスピアやニュートンの著書の初版も所蔵されている希少本や写本が集まる図書館で、研究者達が静かに机に向かっている。静寂に包まれながら佇んでいると、何百年も前の本が一斉に囁きかけて来る…という事が起きてもおかしくないくらい、一冊一冊にいろいろなものが詰まっている。古い本に囲まれて過ごせる隠れ家のような場所だ。
いつでも誰でも緑あふれる校庭に入って散歩したり、校舎にもなっている教会の礼拝堂を訪れたり、歴史ある建物を見学したり。大学関係者や学生でなくても、この町の顔として誰にとっても馴染み深い存在、それがトロント大学なのだ。
(写真キャプション)
上:夏は緑がまぶしすぎる。木陰で昼寝のためにトロント大学通いも。
中:ロバーツ・ライブラリー
下:その一角にあるトーマス・フィッシャー・レアブック・ライブラリー
- Kyuena キュエナプロフィール
- フランス→日本→カナダと移動生活中。
人種のモザイク都市・トロントでの楽しみは、
ベジタリアンインド料理とアールデコ建築探し。
仏語&医療翻訳と物書き業稼働してます。
現在、トロントの日系情報紙『bits』で連載中。