2008年09月10日更新
安い土地を探すには(2)~不動産業者に慣れる
不動産の価格相場は、市や区の境界線のほか、山や道路など物理的にエリアを区切るものによっても大きな影響を受けます。私たちが狙った東京都の東側(江戸川区、江東区、葛飾区など)からは、江戸川を超えて、千葉県市川市に入ると価格がぐっと下がりました。
こうした不動産価格の相場の感覚を養うには、とにかく物件情報に当たることです。不動産情報誌を見るのもいいですが、私たちはインターネットで不動産会社のサイトをチェックすることで数をこなしていきました。たいていのサイトには物件情報の検索コーナーがありますから、沿線や最寄り駅、予算などの数値を入力していけば、どの地域にはどのくらいの価格帯の物件が多いか、ということが把握できるようになっています。
そして気になる物件があればそこからどんどん資料請求をしていきます。不動産業者ともここで接点が生まれます。私たちの場合は、全国に支店があるような大手のほか、地域密着をうたう業者にも資料請求しました。大手の接客マニュアルからは聞けないような、ぶっちゃけたトークや地域の情報を期待してのことです。
不動産業者に資料請求すると、単に物件情報の用紙を送ってくるだけでなく、メールなり電話なりで「ぜひ一度当社へおいでください」と営業をかけてきます。多少うさんくさく感じられることもあるかもしれませんが、最初の5~6社くらいは実際に足を運んでみることをオススメします。その地域を歩いて、雰囲気を感じ取るのと同時に、「不動産業者に慣れる」ことができるからです。
不動産の世界は、業界独自の慣習が色濃く残り、さまざまな法律や規則があります。一般の消費者がレストランやテーマパークに行くのと同じ感覚でのぞむと、手痛い目にあうことも珍しくありません。まずは物件情報とともに「信頼できる不動産業者を探す」ということを念頭に行動しておくといいでしょう。
私たちも10社以上の業者とやりとりをしました。なかには電話の応対だけでこちらが不愉快になって連絡を絶った会社もあります。実際に土地を案内してもらったのは4社ほどでした。
だいたいの業者に共通していたのは、以下のような点です。
・ 土地の仲介だけでは利益が少ないので、自社の分譲物件や建築条件付き物件を紹介したがる
・ こちらの予算と年収の本当のところを探りにくる
・ 他社へ足を運ばせないため、たいした物件もないのにやたら自社に呼びつけたがる
・ 予算外の物件もムリヤリに入れて引っ張り回し、夕方になってから本当に売りつけたい物件に連れて行く
最初のうちは物珍しさもあって、言われるままに振り回されましたが、以上のことがわかってくると、「本当にこちらの要望に合う物件があるのか」を事前に確認し、「今日の物件案内は○時まで」とけん制してから、見学に向かうようになりました。
でも、こうして実際に足を運んで本気を示さないと、業者は「いい物件」は出してきません。「いい物件」とは、売り主から出されたばかりの土地です。そこで「本気の客」、「売ってメリットのある客(自社で建築させてくれる客)」に斡旋し、残った土地はチラシや広告をつくるという流れです。
ただ、私たちが狙う「安い土地」は意外と残り物の中にあったりする、というのもまた真実でして。次回は私たちの土地探しで重視したことと、候補物件の遍歴について触れていきます。
- 渡辺圭彦プロフィール
- 1970年生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業後、扶桑社「新しい住まいの設計」編集部に勤務。その後、(株)ハウジングエージェンシーを経て、編集・制作会社へ。2004年よりフリーに。著書に「家づくりのホント~欠陥住宅にハマらない心得」(週刊住宅新聞社)など。2009年2月に自邸が竣工。