2008年09月24日更新
土地選びの条件と物件巡りの日々
不動産業者からファクスなどで送られてきた物件情報を前に、私たちはいくつかの選択基準を以下のように固めていきました。 ・建築条件付きではないこと -施工業者を限定される物件では私たちの希望する住まいは建てられないので。 ・駅から徒歩圏内であること -ウチは車を持っていないので。20分くらいなら駅まで歩けるかな。 ・建築可能面積が10坪以上あること -今までの私の住宅取材経験からそれが目安になると思っていました。 ・地盤がいかにも弱そうな地域は避けたい -明らかな埋め立て地だと地盤改良に予算をとられてしまうので。 ・前面道路が狭すぎたり、高低差の大きい斜面は避ける -これも建築費用がかさむもとになりますからね。 ・新興住宅地は嫌だ -人の生活の雰囲気がある場所で生活したかったんです。 建築費用を残すためにもなんとか1000万円台で土地を入手したい。それにはある程度、条件を妥協しなければいけないのも理解していました。「建築条件付きではなくて、1000万円台で、建築可能面積が10坪台なら、とりあえず見に行こうか」。そんな感じでした。 初めて見に行ったのは、JR総武線「市川」駅から徒歩20分以上の古家付き物件でした。自分のペースで見てみたかったので、業者に案内をしてもらわず、妻と息子と3人で地図を頼りに歩くことになりました。交通量の多い通りから1本入ると、今度はくねくねと続く細い道。周囲を隣地に囲まれた旗竿状の土地は、あまりに狭苦しく見えてしまいました。「市川駅が最寄りなのはいいけど、これは難しいんじゃない?」、「道路も車が多くて歩くのも危なっかしいね」…。その後、市川、本八幡では手持ちの予算内ではどこも道が狭くて厳しい物件しか見つからなさそうだという結論に。 次は、北総線「秋山」駅から徒歩圏内の物件です。「北総線って運賃高いね…」、「駅前はけっこうさびしいね」、「これから開発されるかもよ」、「家ばっかりだね」…。夫婦で思い思いの感想を口にしながら、「この駅もナシだな」。 東武野田線も視野に入れながら検討を進めるうちに、ちょっとその気になったのは、ネットの検索で引っかかった下総中山の物件でした。JR下総中山から徒歩20分で、商店街にある20坪そこそこの土地。敷地の形状は細長くて古家付きだけど、何より門前町である下総中山の町の落ち着いた雰囲気がとても気に入ったのです。近くに小学校もあるし…。 現地には3回ほど足を運びました。一度は下見で、その次には現在居住中の持ち主にお願いして既存の家の内部も見学。さらには雨の日に周辺の様子がどう変わるかも、確認しました。そこまでしたのですが、「雰囲気が暗いかも…」。隣家が迫っていたので建て替えするのもけっこう費用がかかりそうというのもあったのですが、印象がどうしても気に入らなかった…。一生住む土地ですからね。そんな相性が意外と重要ではないかな。夫婦ともそんな風に感じたのでした。 その後、武蔵野線沿線で印象のいい更地の物件もありました。前面道路の向こう側が一面畑で見晴らしがいい。でも「ちょっと検討して…」と思っているうちに、とっとと売れてしまいました。逃がした魚は大きい、というのは本当ですね。でもそれも運命なのかな、と今になって思います。慌てて飛びつかなくても、不思議に結ばれた土地はあるものです。それが昨年12月に出会った物件でした。次回は、その土地の購入を決めた経緯のお話です。- 渡辺圭彦プロフィール
- 1970年生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業後、扶桑社「新しい住まいの設計」編集部に勤務。その後、(株)ハウジングエージェンシーを経て、編集・制作会社へ。2004年よりフリーに。著書に「家づくりのホント~欠陥住宅にハマらない心得」(週刊住宅新聞社)など。2009年2月に自邸が竣工。