2008年12月17日更新
古家の解体と見積もり調整
挨拶回りの翌週、既存の古家の解体工事が始まりました。現在は、解体時に発生したゴミも分別してから廃棄することになっているので、昔よりも作業の手間がかかるのだそうです。 1週間近い工期のうち、6月14日に息子を連れて解体の現場を見に行くことにしました。当日は晴天で初夏を思わせる暑さ。日を遮るもののない、カンカン照りの現場で、作業が進められていました。 着工からすでに数日経ったあとということもあり、屋根や外壁などの建物の外側は外されており、柱や梁といった構造部が次々とトラックに積み込まれているところでした。以前、住宅誌の仕事で解体の現場を取材したことがあったのですが、自分の家のこととなると、やはり多少実感が異なります。 「けっこう作業音が響くなあ。近所に迷惑をかけるなあ」、「昨年までは人の住んでいた家なのに、こうしてゴミにしてしまうのはなんだかもったいないなあ」、「家1軒を解体すると、けっこうな量のゴミになるもんだなあ」…e.t.c.。 息子はショベルカーが実際に作業をしているのを目の当たりにするのは初めて。いつもはミニカーでしか知らない”働くクルマ”はこんな音を立てて、こんな仕事をしているのだと体感できたわけです。自己満足かもしれませんが、わが家の始まりを見せることができて、よかったと思いました。 一日の終わりには、作業に従事していたみんなの手で周辺の清掃が行われました。「自分ちならいいけど、ひとんちなんだから、しっかりやれよ!」、「道路に落ちたクギ、見逃すなよ」、「そこもっと水かけて洗えよ!」。先輩の職人がひっきりなしに若手に声をかけます。解体作業の間には、どうしても前面道路にゴミが飛び散ります。泥で汚れるところもあります。近隣へ迷惑を残さないように、念入りに清掃を行うのです。もっとも、そうやって注意を喚起する声を響かせることで、近隣に「気を付けていますよ」というアピールをしている面もあるのかもしれませんが。 その後はプランの見積もり調整に入りました。地盤調査の結果、この敷地は予想以上に地盤が弱かったため、鋼製杭を打ち込むことで地盤補強をすることに。当初、想定したセメントミルクを注入して補強する地盤改良工法と比べ、倍近い金額がかかってしまいますが、安心できる住まいにするためには仕方がありません。 その影響を受けて、建物本体や外構のプランも再度見直し、コストダウンをはかっていくことに。ルーフバルコニーを削ったり、2階の内装をラワン合板のみにしたり。1階の木製サッシの造作も格子入りではなく、シンプルなものに変更。夢が膨らんだあとだけに、こうしたコストダウンの検討はなかなか精神的にツライものがありました。 設計者である増井さんは「単純な箱型の建物にしたり、既製品だけで構成したりすれば、簡単に減額できます。でも、プランの本質的な部分を削ってしまうと、何のための家づくりかわからなくなってしまいます。本当に必要なものだけ見直して、そうでない部分に手を入れていきましょう」と言ってくれました。 そうはいっても、それまでのプランを気に入っていただけに、自分の資金力の無さが今になって悔やまれます。毎回の打ち合わせのときに提案される減額案が、裁判の判決書のように思えたこともありました。 夫婦でも提案されたプランについて、さんざん話し合いました。資金の乏しさは最初から覚悟していたので、できることが限られているのはわかっていたのです。まあ、最後は「現実的に払える家でないと意味がないしね」ということで納得。建築確認の申請にGO!を出しました。 申請が通ればいよいよ建築工事の開始。紙の上にしかなかった”わが家”が形になっていくわけです。次回は、そのオープンニングセレモニーとして地鎮祭に取り組みます。- 渡辺圭彦プロフィール
- 1970年生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業後、扶桑社「新しい住まいの設計」編集部に勤務。その後、(株)ハウジングエージェンシーを経て、編集・制作会社へ。2004年よりフリーに。著書に「家づくりのホント~欠陥住宅にハマらない心得」(週刊住宅新聞社)など。2009年2月に自邸が竣工。