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住宅ライターの家づくり奮闘記

10月14日の上棟の様子。養生シートに囲われていますが、わが家の骨組みは確かに立ち上がっていました。早く全貌を見てみたくなります。

直会の支度に右往左往する家族。幣串を飾っているのが大黒柱です。埼玉の西川材で、丸太の状態で仕入れて製材してもらったものだとか。

2009年01月14日更新

そびえ立つ8寸角の大黒柱・上棟

 せっかくの自邸の建築なのでなるべく各工程は見に行きたいと思っていたのですが、なかなか足を運べなくてやきもきするはめに…。仕事場から現場までは1時間ほどの距離があり、平日は打ち合わせやら取材やらで時間がとれません。週末も子供が熱を出したりすれば病院を往復しなければなりませんし、家事や買い物などで夫婦そろって身動きがとれなくなってしまいます。そもそも私の本業である住宅の取材は建主の休日である土日に多いし、シメキリが迫れば週末返上で原稿に取り組まなければなりません。

 そうこうしているうちに地鎮祭からひと月半が過ぎ、上棟を迎えることに…。上棟とは、柱を立ち上げて梁と組み合わせ、建物の骨組みを形成する作業のことです。わが家の場合は小さいながらも大工さんが手作業で施工する部位が多かったのですが、それでも1日で躯体ができあがってしまいました。

 上棟日は10月14日。この日のうちに作業をできるだけやってしまいたい、という大工さんの要望により、上棟式は1週間後の10月21日に行うことに。それでも初日の作業を見たくて、午前中に家族で駆けつけました。

 前日のうちにすでに土台が基礎に取り付けられており、私たちが到着した頃にはすでに2階まで構造が組み上がっていました。足場と養生シートがかけられていたので、全体の様子ははっきり見えるわけではありませんが、それでも「ここが仕事部屋で、あそこが2階の子供室だ」という見当はつきました。

 中央には8寸角の杉の大黒柱。工事中なので傷がつかないようにまだ紙に巻かれていましたが、存在感は十分。「う~、早く見たい」と内心ワクワクしていました。

 しばらく様子を見て、午後には帰宅。ちょうど私たちが引き上げる頃、雨雲が大きく広がり、家についたときには大粒の雨が落ちてきました。「大丈夫かな…」。翌日、現場担当の池上さんに問い合わせると、激しい雨の中、無事に予定通り工事が進められたとのこと。事故もなく、ほっとひと安心です。

 翌週は上棟式。例によって必要なものを池上さんに聞きます。「当日の作業もあるので午後3時からの開始ということで」、「大工さんが3人と増井と私が出席します」、「席やテーブル、紅白幕等はこちらで用意させていただきます」、「ご用意していただくものとして一般的な例ですと、お寿司の皿盛やオードブルを一皿ずつ、乾き物を少々、ビール、お茶等飲み物といったものが主流になります。またはお弁当と乾き物、飲み物といった場合もあります」などなど。

 上棟式は現場で働く大工さん、職人さんが中心になって、無事に棟上げできたことを祝い、今後の工事の無事を祈願するもの。そのあとに神様に捧げた御神酒をみんなで酌み交わす「直会(なおらい)」という宴会を催すことになります。で、建主から職人さんちたちへご祝儀やお弁当、お酒などを渡す、という段取りです。

 ご祝儀の額は池上さんに確認して、問題は直会の飲食物をどのくらい用意したらいいのか、ということ。「午後3時半って中途半端な時間だよね。でもおやつというわけにもいかないし」、「とりあえず船橋駅で寿司を桶で2つくらい用意しようか。で、乾きものと飲み物も駅のスーパーで」、「お酒ってどのくらい飲むかねえ」、「乾杯用に缶ビールを人数分くらいかな。あとは御神酒もあるし」。紙皿に割り箸に、家族用のソフトドリンク。どのくらいの時間やるのかもよくわからないので、とにかく分量の見当をつけるのが大変でした。

 当日はまず、棟梁の尾形さんにご挨拶したあと、建物の四方に塩とお酒を撒いて場を清めます。このあたりの儀式も地方によっていろいろあるようですが、まあ簡略に。直会の場には私の母も手伝いに来て、なんとか形が整いました。

 建主として私が簡単にご挨拶の口上。工事の無事を祈って乾杯のあと、ご歓談。増井さんや大工さんたちの話に耳を傾けながらも子供たちの面倒を見て、場の飲食物や箸、皿の調整などにも気を配り、となかなか落ち着けません。慣れない場であるだけにかなり気を使うものだということがよくわかりました。

 それでも1本筋の通った棟梁の人柄に触れられただけでも収穫でした。その手が立ち上げた大黒柱と居間の垂木も実に頼もしく感じられました。

住宅ライター 渡辺圭彦

渡辺圭彦プロフィール
1970年生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業後、扶桑社「新しい住まいの設計」編集部に勤務。その後、(株)ハウジングエージェンシーを経て、編集・制作会社へ。2004年よりフリーに。著書に「家づくりのホント~欠陥住宅にハマらない心得」(週刊住宅新聞社)など。2009年2月に自邸が竣工。
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