2009年02月25日更新
引越し前に雑誌の撮影
ほぼ完成し、あとは住むばかりとなった我が家。引っ越しの前に住宅雑誌の撮影が入ることになりました。最初は「え? 中がガラガラで絵になるのかな」と不安でしたが、考えてみれば食卓は造り付けだし、ソファや収納家具は必要ないつくりになっています。ベッドのない寝室とおもちゃのない子供室さえなんとかすればいいか、と引き受けることにしました。 当日は増井さんが木のおもちゃや植木鉢、ちょっとした小物などを持ち込み、私もモデルとして息子を連れていくことに。カメラマンには以前から住宅誌で仕事をご一緒している後藤徹雄さんにお願いしました。 土間が完成し、植木が植えられている我が家の完成形を見るのは、実はこの日が初めて。某テレビ番組の渡辺篤史氏の気分で我が家を外観から眺め、「ほほぉ」とうなりながら、玄関に上がりこみました。 実際に使う予定の手持ちの照明器具を取り付け、鉢を飾り、テーブルに食器を並べて…。持ち込んだモノを配置していくと、それらしい雰囲気ができ上がります。 2階の子供室には木製のおもちゃを置き、息子が遊んでいるところを撮影しました。子供や動物がいると、なんでもない部屋でもなんとなく絵になっちゃうんです。これはいつもの住宅取材でも使う手。 曇り空で自然光が弱かったので、メインカットとなる居間の撮影のときには、照明をつけました。白熱電球の暖かな光が、漆喰の壁に広がり、味わい深い陰影を浮かび上がらせます。 私が食卓に座り、息子が居間で遊ぶのを眺めるカットも。自分が被写体となるのは、もちろん初めてのこと。もう少しやりにくいかなと予想していたのですが、息子が自然体だったせいか、気負わず笑顔を見せることができました。 撮影は2時間ほどで順調に終了。私も建主や設計者に対する取材がない分、気が楽でしたね。 あとは自分で原稿を書くばかり。まだ住んでいないのでわりと第三者的に書けるような気もしますが、めったにないことなので文中に「私」を登場させてみるのも面白いかもしれません。書き出しはこんな感じで。「これは、住宅ライターである私の家。妻と2人の子供と一緒に暮らす場であり、約3畳の仕事場もある。延べ床27坪の小さな家だ。」…。 その翌日は、融資を受けた中央労働金庫で最終的な融資実行の手続きを。ますいいリビングカンパニーの増井千恵子社長(設計者・増井真也さんの御母堂)と藤井さんにも立ち会っていただき、工事費の残金の支払いも滞りなく終了。登記書類を手にし、晴れてあの家が私たちの所有物となりました。 その午後には現地で現場担当の池上さんと引き渡しに関する打ち合わせ。引き渡し書、住宅の保証書、設備機器類の取扱説明書のファイル、玄関のカギを受け取ります。 まだこの期に及んで、自分の家になったという感慨や実感がまったく沸き起こってきません。もう少し感動するかなと思ったのですが…。ちょっと残念なような、拍子抜けのような。 でもよく考えてみれば、この段階ではまだ増井さんや池上さんや大工さん、職人さんたちの築き上げてきた部分しかないわけですから、それも当たり前なのかもしれません。実際に生活を始め、掃除をし、食事をし、冷暖房をし、しつらいを整える、といったことをしていかないと本当の意味での「我が家」にはならないのでしょう。 とりあえずは引っ越しへ向けて、荷造りのラストスパート! 食器棚などの粗大ごみを捨てて、今は別に借りている仕事場の片付けもしないといけません。電気、ガス、水道、電話、インターネット、郵便、住民票に健康保険の手続きも必要です。 仕事も待ってくれません。引っ越し前の3日間をプライベートに使うため、徹夜の連続。妻も慣れない荷造りで心身とも消耗。夫婦ボロボロの状態ですが、ひたすら新居への日々を突っ走ります。次回はついに入居!- 渡辺圭彦プロフィール
- 1970年生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業後、扶桑社「新しい住まいの設計」編集部に勤務。その後、(株)ハウジングエージェンシーを経て、編集・制作会社へ。2004年よりフリーに。著書に「家づくりのホント~欠陥住宅にハマらない心得」(週刊住宅新聞社)など。2009年2月に自邸が竣工。