2010年05月19日更新
子ども室をどのように使うか
この春、上の子が小学校に上がりました。ランドセルを探してきたり、入学式ための子供用ジャケットを用意したりと、それなりにいろいろと準備をしていたのですが、いわゆる学習机の類は買いませんでした。いま、宿題はキッチンの大テーブルでやっています。親が様子を見ながら一緒にできますからね。子ども室でひとりで集中して勉強するようになるのは、中学校に入ってからでいい、と考えています。
そもそも我が家は、仕事部屋と寝室、トイレ、浴室以外はドアのないオープンな間取りです。2階の子ども室にしても、階段から間 仕切りなく、空間が広がっています。6歳男児と2歳女児の組み合わせですが、それぞれの空間を完全に仕切るのは10年近く先になるでしょう。とりあえずは、大きい部屋のままで広く使うつもりです。
子ども室のありかたについては、さまざまな意見があると思います。最近は我が家のようにオープンなつくりになっている例も多いですが、一方で「個の空間がないと落ち着いてモノを考える時間が持てない」という指摘をする識者もいるようです。そのあたりは、子どもの年齢や性格、教育方針、家庭における家族関係のあり方などによって、家ごとに違っていて当然だと言えるでしょう。
家づくりの過程で、基本設計の段階ではそうしたことについていろいろと思いを巡らせました。延べ床で30坪未満の小さな家ですから、子ども室などは最小限のスペースにとどめるという案もありました。机やベッドもその広さに合わせて造り付けにして、コンパクトに2つの部屋を用意するというものです。
その案を図面で見せてもらったとき、とてもきっちりとおさめられていて、機能的でなんだかオトクなような気がしました。そのときは「これもいいな」と思ったのですが…。
あとから設計を手掛けた増井さんから電話がありました。「ちょっと作り込みすぎてしまいました」という反省の弁を述べられたのです。次の打ち合わせ時には、現在のような大空間のワンルームが提案されることに。
ある程度、ライフスタイルの確立した大人と違い、年齢の低い子どもたちはどのように成長するかわかりません。また10年なり、20年なりを過ごしたら、いずれは独立して家を離れていくものです。そうした変化に対して、用途を決めつけすぎた空間では追随していくことができません。家という家族の暮らしを受け止める器としては、ある程度の融通を利かせるための余地が必要。そういうことを増井さんは伝えたかったのだと思います。
我が家の場合では、それが正解だったように思います。子どもたちは子ども室に止まらず、2階の寝室、1階の居間、キッチン、ときには私の仕事部屋にも出没します。ひとりになりたいときには、ロフトに上がったり、こたつに潜り込んだり、子ども室のテントに寝そべったり。オープンな間取りなので、そのあたりの切り替えは、わりとスムーズにできているのではないでしょうか。
ただ、いずれ専用の机は用意してあげる必要はあるかなとも思います。それはそのときにまた考えればいいことで。今は家族のコミュニケーションを通して、生活習慣のリズムを築いていければいいのかな、と思っています。
- 渡辺圭彦プロフィール
- 1970年生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業後、扶桑社「新しい住まいの設計」編集部に勤務。その後、(株)ハウジングエージェンシーを経て、編集・制作会社へ。2004年よりフリーに。著書に「家づくりのホント~欠陥住宅にハマらない心得」(週刊住宅新聞社)など。2009年2月に自邸が竣工。