2010年11月10日更新
無垢の木のよさを引き出すのはメンテナンス
わが家にはふんだんに木材が使用されています。柱やテーブルには杉、床にはパイン、2階は床・壁・天井がぐるりとラーチ合板で仕上げられています。そのほか、収納や建具の造作、階段や手すりなど、視界の中に木材が見えない部屋は、システムバスくらいのものです。木材はなんといっても雰囲気がやさしげです。手触りもいいし、日差しが当たったときの暖かい色味にはほっとさせられます。無垢材であれば、湿度が高い時期には湿気を吸い、空気が乾燥してくると水分を放出するという、調湿性能も発揮します。そんな空間で日々を暮らしていると、心身にほどよく馴染む何とも言えない心地よさが室内に満ちているのが肌身で実感できますね。
また木材の特徴のひとつとして「経年変化」も挙げられます。当初は白木の状態だった板や柱の表面がだんだんと色づいて、味わい深い色つやがじんわりとにじみ出してくる現象です。プラスチックなどの工業製品は時間が経つごとに劣化して薄汚れていってしまいますが、自然の材料である木材は、より美しくなっていきます。建主としては、わが家の価値が上がっていくようで、何とも嬉しいものです。
ただし、その一方で木材はメンテナンスが必要です。モノが表面に落ちたりぶつかったりすれば傷がつきますし、水気のある汚れが付着すれば繊維の微細な凹凸の中に浸透していってしまいます。
ある程度は「汚れや傷も味のうち」とのんびり構えていられますが、傷がついたらやすりなどで平滑な状態に戻したり、汚れが染みつかないうちに拭き取ってしまう。きがついたときにはそんな手当てが必要です。それらを放置しておくと、あっという間に破損や汚れがひどくなって取り返しのつかない状態に…。なかなか油断がならないのです。
先日はベランダの木部塗装が剥げてきたので、晴れた日を狙って塗り直しました。そのままにしておくと見た目がよくないのはもちろんのこと、雨が浸透して腐ってしまいますからね。
保護力の強い油性の塗料にするか、とも迷いましたが、今回は素人でも塗布しやすい水性塗料にしました。木に染みこむタイプなので、木目などの表情が生かされるというメリットも選択のポイントになりました。
午前中かかって、塗料をひと缶使い切ってしまいました。若干塗り残しがあるので、また次の日曜日に。そうそう、土間の柵も塗らなくては…。
家を建てると、休みの日もなかなか遊びにいけません(笑)。でも、こんな手入れを繰り返していると、わが家がまるで自分の体の一部のように、大事なものに思えてくるのです。
- 渡辺圭彦プロフィール
- 1970年生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業後、扶桑社「新しい住まいの設計」編集部に勤務。その後、(株)ハウジングエージェンシーを経て、編集・制作会社へ。2004年よりフリーに。著書に「家づくりのホント~欠陥住宅にハマらない心得」(週刊住宅新聞社)など。2009年2月に自邸が竣工。