2012年05月16日更新
植物の潤いと癒しを毎日の暮らしに取り入れる
ゴールデンウィークが過ぎると、気温もぐっと上がって気持ちのいい季節がやってきます。厳しい寒さから解放されて、人間だけではなく、鳥や虫や雲さえもにわかに活気づいているような気がします。緑も適度な日光と雨を得て、青々とした葉を茂らせて目にも鮮やか。わが家の桜も花を落としたあと、たくさんの葉を出しました。その勢いは去年の同じ時期よりはるかに上。そんな姿を見ていると、なんだかこちらも嬉しくなってきます。
今年は土間に置いた鉢植えも数を増やしてみました。花を植えたハンギングバスケットを軒先に吊してみたり、母の日のために用意したカーネーションとバラを鉢に植え替えてみたり。春先から育てているローズマリーやラベンダーもすっかり根付いてきました。そうこうしていると、息子が里芋やインゲンマメやトウモロコシをプランターに植え始めたり。
それぞれ花を愛でたり、香りを楽しんだり、収穫を期待したりと、私たちの生活の中でちょっとした喜びを与えてくれています。
以前のマンション暮らしではここまでグリーンに関心が向くことはありませんでした。真東向きのベランダは、午前中は直射日光で焼かれ、午後は日陰になり…。高層階だったので強い風が吹き付けるという悪条件もありました。洗濯物を干す以外は、あまり活用していない場所でしたね。
わが家の土間は南向きで日当たりもいいので、植物には快適なはず。また道路からは高い位置にあり、木柵もあるため、ここで園芸の作業をしていてもさほど周囲の目は気になりません。一昨年はおそるおそる試したゴーヤやアサガオによるグリーンカーテンも、今では夏場の恒例に。
こうして緑を通じて季節や自然と接点を持つというのは、「生き物」としての人間の感覚にいい影響が及ぶような気がします。土をいじって、葉に触れて、毛虫を退治して。生命力そのものに関わることで、こちらも日々の瑣事で失った何かを取り戻せているという実感があります。
家の中が快適なのはもちろん、窓の外に目をやる楽しみもこの家を通じて得ることができました。さて、今年の緑のカーテンは、またゴーヤにしようか、メロンにしてみるか。ここひと月はホームセンターの園芸コーナーから目が離せません。
- 渡辺圭彦プロフィール
- 1970年生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業後、扶桑社「新しい住まいの設計」編集部に勤務。その後、(株)ハウジングエージェンシーを経て、編集・制作会社へ。2004年よりフリーに。著書に「家づくりのホント~欠陥住宅にハマらない心得」(週刊住宅新聞社)など。2009年2月に自邸が竣工。