2015年03月23日更新
ストレスの少ない家で健康的に暮らす
先日、住宅の安全性について取材する機会がありました。家庭内における不慮の事故(転落や窒息など)による死者は年間で約1万2000人にものぼるとか。また、別の統計では、住宅内における室温差が大きいために失神や心筋梗塞、脳梗塞などを起こす「ヒートショック」による入浴中の死亡者も約1万7000人以上はいると言われているそうです。
ちなみに2013年の交通事故による死亡者数が約4000人、過去最多だった1970年でも1万6000人。実は交通事故より住宅のほうが怖い、ということになります(数字上では)。
ある工務店の社長さんは「住まい手にストレスのかからない住宅をつくりたい」と言っていました。彼は「住まいのストレス解消のための大前提は、寒さと暑さによる負担を軽減すること」と言います。
近年の夏の暑さ、冬の冷え込みは厳しくなってきたような気がしますよね。都市部では熱気がこもり、真夏には熱帯夜になるなど、自然換気だけではしのげないような日も増えてきました。断熱と気密をきちんと確保し、冷暖房を効率よく機能させる仕組みが必要であるように思います。
一方で、サッシやエアコンなどの設備機器の性能が向上しているだけに、夏の直射日光を遮る軒、冬の太陽熱を取り込む開口部など自然のエネルギーを生かす建物の設計の工夫もますます重要になってきています。せっかく省エネ性の高い設備を採用しても、建物にその配慮が欠けているようでは、十分な機能が発揮されませんからね。
また、無垢の木材や漆喰壁など自然素材による柔らかい質感、目に優しい色味、光や音の受け止め具合なども、住まう人の心をなごませてくれます。
もうひとつ、わが家で体感しているのは、自然とのつながり。風が吹いたり、雨が降ったり、陽光が差し込んだりという天候の変化や季節の移り変わりを感じられると、人は気持ちに余裕を持てるようになるのでは、という気がします。
いろいろと物騒でストレスの多い世の中だけに、家の中くらいは安心して住めるようにしつらえたいものですね。
- 渡辺圭彦プロフィール
- 1970年生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業後、扶桑社「新しい住まいの設計」編集部に勤務。その後、(株)ハウジングエージェンシーを経て、編集・制作会社へ。2004年よりフリーに。著書に「家づくりのホント~欠陥住宅にハマらない心得」(週刊住宅新聞社)など。2009年2月に自邸が竣工。