2009年09月02日更新
生活に寄り添うインテリア・アートへの考察
―――――――ものづくりびとの家造り―――――――
今は鉄工芸というジャンルでものづくりに携わってはいるけれど、数年前迄はペンションオーナーとの兼業作家でアートについて語れるほどの実績も専門知識も無い。ただ、33年間の営業期間中に訪れてくださった国内外のゲストたち、仕事を支えてくれた頼もしいスタッフたちからたくさんの感性と多様な目線があることを教わることができた。
また、鉄作品を作り出す中で作り手の思いと使い手の気持ちが響きあう経験も持つことができた。そんな中でふつふつとアートに対する思いは深く幅広くなったが、最近手がけた家造りに絞って考えてみよう。
2年前に白馬山麓のペンションオーナーを卒業して、専業作家となるにあたって安曇野に移転を決め、工房と住宅を建設することになったのだが・・・頑固者のこだわり屋、夢はずっしり、予算は軽い。それで果たして家になるのか?本人以外はとても危惧していたのだが、運良く友人の紹介で若い設計士夫婦に巡り合った。我々を上回るこだわり屋で、家を設計するに当たって言われたのが「家の名前を決めてください」、「それに沿った家作りをしていきましょう」はじめは戸惑ったもののその考え大いに気に入った!
そしてひねり出したお題が、
「4時20分の家」(娘のつけた副題:スープとブランケットと読みかけの本)
『斜めに差し込む冬の陽が柔らに部屋を照らすそんな時間
暑い夏の日の太陽もかげりはじめ仕事も一段落、夕餉の準備までの少しの寛ぎ
そして人生においてもそんな時間帯にある私達の棲家・・・・』
写真上:こだわりの工務店さんが、梁一本選ぶのに数十本?数百本?ある中から、
大きさ・曲がり具合等雰囲気に合いそうな物を吟味して選ばせてくれた。
写真下:仕上がりに満足いくまで塗り重ねる設計士魂の入った漆喰壁
家作りというものは総合的な創造物でいろいろなものが組み合わさって出来ている。ついあれもこれもを夢という衣に包んで詰め込みたくなるものだが、はじめにテーマを決めると案外すっきりと道筋が出来てくるものだ。既存の家のインテリアを考える場合も、改めて家の名前を考えてみると、そこから自分が目指すものが見えてきて、アートが単なる家具や置物ではなく生活の一部として呼吸する存在になってくるのではないかと思った。
自分らしさがどこにあるのか見定めてそれに合うものを身近に置く、既成のものに満足することなく求める、探す、作る。そうしてそこに加わったアートにはそれぞれの思い入れや、入手に至った物語があるはず。
こう言いながらも飽き性で外の世界に興味津々の私はあちらこちらでかけては、折あらばアーティストのお宅を訪問。
今春もアメリカで刺激を一杯貰ってきた。(いずれ機会があれば紹介したいと思っているが)
しかし若田さんじゃなくとも”我が家が一番”
我が家の取っておきのアートは窓から望む日々刻々と色合いを変える安曇野の風景
自分で作り出した階段手すり。ステンドグラスも設計士と選び抜く
Photographer:mariko yamamoto
- 鉄工房Eisen(アイゼン)
宮嶋昭夫・宮嶋洋子 宮嶋昭夫 鉄の持つ確かな素材感、朽ちてなお美しい力強さに惹かれて、制作を続ける。作りたいもの語りたいことは山ほどあるが、毎回少しずつ紹介していきたい。鉄工房Eisen
宮嶋洋子 ゆっくりした時間を紡ぎ出しながら家で過ごすのが好きだが、好奇心旺盛で常に面白いものをキョロキョロと探している。その様子の一端をブログ「zarlo」(http://zarlo.exblog.jp/)でも公開中。