2015年07月22日更新
「ホームインスペクター(住宅診断士)」とは?
インスペクターとは、調査官、検査官、監督官などの意味を持つ英単語ですが、とくに住宅の検査、診断を行う人のことをホームインスペクター(住宅診断士)、その診断のことをホームインスペクション(住宅診断)と呼んでいます。
国内の住宅市場においてインスペクションが導入され始めたのは10年以上前のことですが、中古住宅市場の活性化が国の施策として大きく取り上げられるようになったのと並行して、5〜6年ほど前からインスペクションが注目を集めるようになりました。
■インスペクターとはどのような人がなるのか
建物の状態を的確に診断するためには、住宅や建築、不動産取引に関する専門的な技能や知識が欠かせません。そのため、ホームインスペクターとして活動をするのは主に一級建築士、二級建築士、木造耐震診断士、一級建築施工管理技士などの資格を持つ人です。しかし、建築などの知識だけでなく、公平・中立で客観的な第三者の立場からアドバイスをすることも欠かせません。高い倫理観も必要となることから、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会が2009年から「ホームインスペクター資格試験」を実施するなど、その普及や技量の向上に向けた取り組みが行われています。
■インスペクションで何が分かるのか
一般的なホームインスペクションでは、住宅の劣化状態や建具・設備の不具合、欠陥の有無、改修すべき箇所やその時期、購入後にかかるメンテナンスやリフォームのおおよその費用などを明らかにします。そのため、目視によって屋根、外壁、室内、床下、小屋裏などの状態をチェックしますが、必要に応じて機材を使った詳細な検査が行われる場合もあるでしょう。
ただし、その目的によっても検査内容や方法が異なります。売買に伴い「購入者へ判断材料を提供すること」を目的としたインスペクションのほか、既存住宅売買瑕疵保険に加入するためのもの、金融機関による担保評価のためのもの、長期優良住宅化リフォーム推進事業など政策上の規定に基づいて実施されるものなどです。
中古一戸建て住宅や中古マンションの売買に際して行われるインスペクションでは、とくにインスペクターの資格に制限はなく、検査内容も目視による「健康診断」のレベルにとどまることが少なくありません。一方で、国土交通省による長期優良住宅化リフォーム推進事業では、現況検査を行うインスペクターについて「一定の講習を受け、修了考査に合格した建築士または建築施工管理技士」としています。
■インスペクターによる住宅診断がこれから一般的になる?
国は新築中心の住宅市場から、既存住宅(中古住宅)の流通市場拡大に向けた取り組みへと転換しつつあり、2013年6月には国土交通省が「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を策定しています。また、取引前のインスペクションを普及させるため、宅地建物取引士による重要事項説明でインスペクションに関する説明を義務付けるといった法改正も予定されているようです。
これまでは中古一戸建て住宅を対象とするケースが多かったほか、まだ十分に認知されているとは言い難いインスペクション、インスペクターの制度ですが、これからはその普及とともに重要な役割を担うことになるでしょう。マンションの売却においても、買主(購入希望者)からインスペクションの実施を求められる可能性は十分に考えられるため、売主の立場でしっかり対応することを考えなければなりません。
イメージフォト:株式会社リビタの説明会。スケルトン状態で中古住宅購入検討者へ内覧会を実施(2015年1月撮影)
【マンション売却のコツ】
<第1回>マンションを売却する前に知っておきたい基礎知識
<第2回>売却における専任媒介と一般媒介の違いは何か
<第3回>マンションの査定を受けるときのポイント
<第4回>売却を依頼する仲介会社の選び方
<第5回>マンション売却にかかる費用と税金
<第6回>中古マンション市況の調べ方
<第7回>「情報の囲い込み」とは?
<第8回>「ホームインスペクター(住宅診断士)」とは?
- 不動産コンサルタント
平野雅之 リックスブレイン代表。東京都、神奈川県を中心に20年以上にわたって不動産売買の媒介業務に携わる。取引実務に精通する専門家として一般消費者向けの相談業務や現実に即した情報発信をしている。オールアバウト「不動産売却・査定」、「不動産売買の法律・制度」など幅広いテーマでガイドを務める。