2010年10月06日更新
住宅性能表示制度とは?
「性能評価書取得」と書かれた物件広告が最近では珍しくなくなりました。とくに、首都圏の新築マンションにおいては、大手企業と呼ばれる売主ならほとんどが採用しているからです。性能評価書というフレーズには、消費者にとって、なんとなくプラスのイメージが働くわけですが、具体的にはどういった利点があるのでしょうか。
■「品確法」に基づく「住宅性能表示制度」
正確には「住宅性能評価書」という名称。これは2000年4月に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」略して「品確法」で定められた「住宅性能表示制度」に基づいて交付された書面のこと。わかりやすく言えば、国が定めた基準に照らし合わせて、その家の性能を数字などであらわしたもの、となります。
■10分野34項目からなる「住宅性能評価書」
評価書は、以下の10分野から34項目(新築住宅は32項目)の性能評価が表示されています。項目の中の多くは等級で性能が表示されており、一般の人でも一目で性能の高低を理解することができます。
① | 構造の安定に関すること | ② | 火災時の安全に関すること |
③ | 劣化の軽減に関すること | ④ | 維持管理・更新への配慮に関すること |
⑤ | 温熱環境に関すること | ⑥ | 空気環境に関すること |
⑦ | 光・視環境に関すること | ⑧ | 音環境に関すること |
⑨ | 高齢者等への配慮に関すること | ⑩ | 防犯に関すること |
■トラブルを迅速に解決してくれる保険の役割も
新築住宅の評価書には設計段階の「設計住宅性能評価書」と完成時の検査を経た「建設性能評価書」があります。「建設性能評価書」を取得した住宅については、万が一のトラブルが生じ、請負業者や売主との紛争に発展した場合、国が指定した機関に紛争処理を申請することができます。この指定住宅紛争処理機関への「申請手数料は1件1万円」の設定です。したがって、裁判によらず、時間もお金もかけずにトラブルの処理を依頼することができるのです。
わかりにくい住宅の性能を数値などで書面化し、しかも万が一トラブルが起こった時も安心して処理を依頼できる。一般の人から見れば、ぜひ活用したいと思うかもしれません。どうせ買うなら「評価書取得」の物件にしようと決めている人も少なくないでしょう。しかしながら、住宅性能表示制度も万能ではありません。この制度自体がかかえる課題があることも事実です。代表的な点をふたつほど挙げてみましょう。
■技術的に測定可能な項目に限られている
評価する項目は客観的に性能が示せるものに限られています。したがって、そもそも住まいに求められる「使い勝手の良さ」や「快適性・居住性」などは尺度を設けることができず、項目として存在しません。また個人の好みが大きく分かれるところの「デザイン」や「コストバランス」も含まれていません。
■普及にはしばらく時間がかかる!?
住宅性能表示制度は任意です。2006年に制定された「住生活基本法」では「住宅性能表示制度の実施率」目標を2005年の段階で新築住宅16%だったものを2010年には50%まで引き上げようと設定しました。しかし実際には、現時点で20%程度の普及にとどまっているもようです。評価書を取得するにあたっては、1件当たり数十万円のコストもかかります。広く普及するためには、もうしばらくの時間とコスト負担を軽減する施策が求められるところです。
- 家の時間
編集部 洗練された住宅の情報サイトはないの?本当に価値ある家、プロがすすめる住まいが知りたい―売り手の宣伝が中心となったサイトとは一線を画した、まったく新しい住まいのウェブマガジン「家の時間」。自分らしい家を探している高感度なあなたのために。読んで面白く、ためになる時流にぴったりな暮らしのコンテンツをご用意しました。