2012年06月27日更新
「第一種低層住居専用地域」は、なぜ人気が高い?
「用途地域」という言葉を耳にしたことはありますか。これは、市街地のなかを「それぞれどんな用途で活用していくか」枠組みの分類を示したものです。少し難しくいえば、「都市計画法における『地域地区』のなかのひとつで、街づくりの根幹を定める利用分類」となります。おおまかには「住居」「商業」「工業」に大別され、こまかくは12種類の用途地域から構成されています。
【用途地域の一覧】
住居 | |
第一種低層住居専用地域 | |
第二種低層住居専用地域 | |
第一種中高層住居専用地域 | |
第二種中高層住居専用地域 | |
第一種住居地域 | |
第二種住居地域 | |
準住居地域 | |
商業 | |
近隣商業地域 | |
商業地域 | |
工業 | |
準工業地域 | |
工業地域 | |
工業専用地域 |
それぞれに、建物の用途、建ぺい率(敷地面積に対する建築面積の割合)や容積率(延床面積に対する敷地面積の割合)、高さの制限、土地面積の制限などが定められています。例えば、低層住居専用地域や工業地域では病院や大学を建てることはできません。また、工業専用地域では住宅の建設そのものが不可能です。
用途地域のなかで最も規制の厳しい地域が「第一種低層住居専用地域」です。良好な住環境を維持するために、建てられる建物の高さや建ぺい率・容積率が低く抑えられています。店舗の設営面積なども細かく制限されています。
では、なぜ高さや建ぺい率・容積率が低いとなぜ好環境が期待できるのか。例えば、高さ制限が10mなら3階建てが限界。日影も少なく、空の大きな街並みを維持することができます。また、建ぺい率が抑えられていれば、地面にも陽がよく届き、冬でも街全体が明るく感じられるでしょう。空地割合が高くなることから、自ずと緑地も増えます。
時間の経過とともに、木々は育ち、背の低い家並みを覆い隠してしまいます。それぞれの木に花が咲き実を結び、そこへ鳥が舞い降りるといったひとつの生態系が完成していくのです。住むほどに、「五感で自然を楽しむ」暮らしを満喫できるでしょう。
さらには、区画がこまかく分割されるのを防ぐため、敷地面積の最低ラインを決めている行政も少なくありません。これも好環境を持続させることがねらいです。住む人の数が少ないため、街なかでの渋滞や混雑も起きにくいといえるでしょう。「第一種低層住居専用地域」は、さまざまシチュエーションにおいて、ストレスフリーな環境づくりを果たすのです。
では、そんな「第一種低層住居専用地域」は、都心であればどのあたりに存在するのでしょうか。そもそも高度利用を促進する都心部において、「低層地域」はごく限られた場所にしかありません。港区であれば、「高輪4丁目」のごくわすがな一画が。文京区は「本駒込6丁目」(大和郷『やまとむら』とよばれるところ)。千代田区や中央区には「第一種低層住居専用地域」は存在しません。
渋谷区から城南にかけては徐々に増えます。まず、渋谷区は日赤通りの一画「広尾3丁目」の一部、恐らくここが最も都心に近い「一低」ゾーン。松濤、上原も該当箇所があります。品川区・目黒区はさらに増え、「東五反田5丁目」(池田山)、「東五反田3丁目」(島津山)、「上大崎2丁目」(白金長者丸)、「北品川5丁目」(御殿山)、「北品川6丁目」(八つ山)といった城南五山。青葉台、上目黒なども対象地域が存在します。
同じ「第一種低層住居専用地域」でも、建ぺい率容積率が「50%100%」とさらに低く制限されているのが、目黒区「下目黒6丁目」。世田谷区の風致地区(「国分寺崖線」)にある「上野毛2丁目」「尾山台1~2丁目」や大田区「田園調布3丁目」などはもっと厳しく、40%80%に規定されています。
【参考サイト】
東京都「土地」在庫、ピークから半減 (2017年10月19日掲載)
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