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ハウスメーカー進化論

2012年06月27日更新

洗練された外観デザインとマンション品質「J・RESIDENCE」

「”もっとフツーの家を売りたい”。そんな社員の声が背景にありました」。そう語るのは、住友不動産の和泉沢忠晴氏(専務執行役員 製品開発室長)。現在、「駒沢ハウジングギャラリー」に展示されている『J・ARBAN』(ジェイ・アーバン)は、家の中に庭がある「閉じた家」。たしかに一風変わった住宅といえるだろう。今回の新商品『J・RESIDENCE』(ジェイ・レジデンス)の開発にあたり、「まずこだわったのが外観デザイン」。「どうも日本の家は見た目に格好良いとは言い難い」そんな課題から取り組んだそうだ。

 『J・RESIDENCE』のモデルハウスは「瀬田ハウジングギャラリー」(世田谷区)の一角に完成(2012年6月)。第一印象は、何といっても大きくせり出した「軒」であろう。軒天井に天然木を張り込んだことで重厚感が強調されている。軒の深さは、建物の角を織り込むことによっても、深さがより印象付けられているようだ。そして、第二の特徴は大ぶりの窓。連続する大きな開口部に、周囲の風景が映る。「我が家が、街並みに溶け込むイメージ」が無意識のうちに芽生えるのではないか。

 さらに、窓回りの特徴として、サッシュ框の露出を抑えた点にも注目したい。ガラス面で仕切られたタテヨコの大きな平行線は、水平を強調した回廊型のバルコニー手すりともあいまって、見た目に統一感を与え、美しいファサードに仕上がった。床に埋めたサッシュは部屋内から感じる「空間の広がり」にも多大に貢献。オーソドックスなカラーリングやデザインのなかにも、上質さと機能美を追求したこだわりがディテールに感じ取れる。

 商品企画上の特徴はもうひとつある。それが「マンションの室内装」。一般的に、マンションのグレードを注文住宅に持ち込んだと聞けば、それがリーズナブルを意図したものなのか、ハイグレードを意味することなのか、ひょっとしたら瞬時には理解しがたいかもしれない。だが、住友不動産はそもそも「ビルとマンションの開発が中心の会社」(和泉沢氏)。年間数千戸のマンションを手がける「その調達力を利用しない手はない」と考えたそう。

 一邸ごとに顧客と向き合って図面を起こす注文住宅とは異なり、分譲マンションは一度に数十戸、いや場合によっては千戸以上もの大規模開発を仕掛ける。そこで働く規模の経済たるや、相当のメリットがあると想像できる。全社で発注するロットに注文住宅分野も含めて考えれば、当然「価格以上のグレードが叶う」ということだ。スケールメリットの恩恵を顧客に還元する、大手ならではの特長といえるだろう。

 具体的には、水周りや建具。天然石のキッチンカウンターやモダンテイストの扉デザインを見ると、都心の高額マンションやタワーマンションのモデルルームを見ているようだ。マンションの室内装には収納面での工夫も多い。コンパクトで限られた面積のマンションでは、鏡裏の洗面収納に代表されるように、細かなアイデアがいたるところに詰め込まれている。そんな商品企画も見どころのひとつだろう。




「ニューパワーキューブ」の実物大実験の様子。



緩勾配で軒の深い屋根と彫の深さを強調する化粧柱型など邸宅感を醸し出す外観デザイン。


天然御影石を使ったキッチンカウンターの天板。スタイリッシュなレンジフード。引き出しはスムーズに締まる機能が付く。モダンな色調は家具のようなデザインだ。

 さらに、住友不動産の新たな成果が「制震収納『ニューパワーキューブ』」。これは、1階の中央(付近)部に、基礎と一体化したL字型のPC壁を設け、その上部にダンパーを置き、2階床と接合されるしくみである。実験では揺れの加速度を最大約25%、変形を最大約55%低減させたという。いずれも横揺れに対する効果である。メンテナスは基本フリー。交換の必要性もまずないそうだ。

 同社は、このRC壁を収納にして普段の機能を付加させているのだが、さらにユニークなのが「シェルターとしても使える」といった提案。和泉沢氏は「海外の多くの国では、一家に一台といってもいいくらい護身の意味で家の中にシェルターを設ける文化がある」。そこでモデルハウスでは、制震収納に「鉄の扉」を設置。物騒なこのご時世に……ということなのだが。

 そもそも地震に強いとされる「2×4(ツーバイフォー)工法」を採用しているが、「ニューパワーキューブ」でさらに揺れへの不安を和らげようとのねらい。特色は、比較的に狭小の敷地にも対応できることと、コストが65万円前後とそれほど大きな上乗せにならない点。『J・RESIDENCE』(ジェイ・レジデンス)には「ニューパワーキューブ」は標準で搭載されており、建築単価は坪56万円である。

住友不動産株式会社


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