2014年08月06日更新
トランクルーム増設や駐車場の外部貸し
【第2回 「パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー」管理組合】
道なき道を探して~超高層メガマンション管理組合の試行錯誤 2 「足りないものは自分で作る」
「与えられた環境に満足しない、足りないものは自分で作る、言い値で納得しない、業界常識を鵜飲みにしない」。これが「パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー」の施設管理の鉄則です。
<お仕着せの施設設備に甘んじない>
「パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー」には、比較的リッチな施設設備があります。例えば、150メートル眺望可能な有人カフェラウンジ、特定階ではなく「全階」ホールのセキュリティゲートなど。でもこうした初期設定の設備施設に甘んずることなく、施設の改善や変更を理事会主導で行ってきました。
例えば、玄関ロビーのデジタルサイネージ(電子看板)の設置工事(3年目)。東日本大震災の教訓で、人の集まるロビーに大画面のテレビが必要と判断されたものです。災害対応ですので停電時でも小型発電機とつなげて作動します。普段は公示用のデジタルサイネージとして使われています。
次に、トランクルームの増設(5年目)。初期設定のトランクルームでは数が足りないという住民要望に応えたものです。構想から供用まで3年の歳月をかけて、設計、業者選定、マーケティング調査などすべて住民主導で行ったため、通常の40%程度のコストで仕上がりました。建設費も4年程度で回収の見込みです。
更に今年から5年かけて外構部植栽の全面改良に着手します。武蔵小杉の駅前開発が完了したことに呼応し、周辺環境にフィットさせるためです。この植栽事業のユニークな点は、フルメンテ補償がついていること。植栽業は植えっぱなしで、後の生育不良はお構いなしというのがこれまでの定番でしたが、そんな業界常識を打ち破りました。
<予防型修繕から状態監視型へ>
私たちは常々、時期が来たら自動的に施設設備を取り換えるという従来の「予防型」の修繕発想はおかしいと考えています。ともすれば素人が多い管理組合は、時期早尚なのに不必要な修繕費を、業者の言い値で払うという慣行がずっと続いています。
設備や施設の損傷は個体ごとに異なりますから、必要に応じて臨機応変に保全管理を行えば足ります。そのために、「パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー」では日常修理と大規模修繕を区分けせずに「状態監視型」を目指しています。
例えば、ポンプ機械の全部入れ替え費用として3000万円というのが元来の計画でした。そのこころは「時期がきたから全部替える」というものです。しかし再度精査すると、パーツの取り替えだけの80万円で済んだのです。
<駅近利便性をマンション管理に活用する>
武蔵小杉といえば屈指の交通利便のよい場所、最近はこれに大型商業施設が相次いでオープンしています。その武蔵小杉の駅改札口から徒歩1分(東急線)と3分(JR)の至近距離にある上に、全方位で商業施設と面している「パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー」はそれだけでも最大級の生活利便を満喫できる環境にあります。
ところが、この交通利便がアダとなって住民用駐車場の利用が想定を下回り、稼働率も高くない状況でした。今後世代が進むとこの傾向に拍車がかかる恐れもあります。他方で、人の往来が多い駅前には月極駐車場がありません。
このような中、武蔵小杉駅前という立地便をマンション管理に生かせないかという発想から出たのが駐車場の外部貸でした。(3年目から)。機械式駐車場ですので、保守管理や修繕費もバカにはなりません。外部貸は駐車場の運営収支の改善にも役立ちます。外部貸は、こちらをご覧下さい。
<元の制度をゼロベースでカスタマイズ>
管理規約や細則は支配されるものではなく、使うものだと考えています。したがって、実情に合わせて毎年規約を改定してきました。それもいきなりルールを変えるのはリスクがあるので、重要な変更は、まず「試行的」に変えてみて、住民反応を探るという手法をとっています。日々の生活に影響を与えるルールは、実際に運用してみないとわからないことがたくさんありますからね。
業者契約にもひとひねり入れています。先にみた植栽のフルメンテ特約もそうですが、除雪作業や震災など大災害時の特別支援なども業務として管理会社さんにお願いしています。
<タワ-マンションならではの高度かつ先進的な防災>
東日本大震災を機に防災委員会が結成され、一気に防災活動が開花しました。防災委員会は各分野の専門家だけではなく、主婦も参加した幅広い視野が持ち味です。2500人規模ですから教科書通りにはいきません。なので、実践的、現実的な「使える」防災をモットーにしています。
第一に、住民目線の活動です。例えば委員会が各フロアに出向いて、消火栓、非常電話等などの設備を説明し、住民が実際に設備を使えるよう個別指導を実践しています。
「誰も読まない立派な」防災マニュアルは無用です。「パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー」ではマニュアル文書の一部を「お助けシート」として簡略化し、いざ発災時には「これだけ見れば大丈夫」というパンフレットにして全員に配布しています。
防災訓練は、実際に防火扉を閉めるなどリアルな場面を設定する他、イベント性のあるものに仕立てて、住民関心を盛り上げています。昨年は、川崎市の救助ヘリを招致し、200メートル屋上で訓練実演をしていただきました。また、備蓄用飲料水1800リットルを地下から59階全階に運搬する作業を、住民総出でやってみました。来年は、消防と警察関係者の「ステアレース」の全国大会の誘致が決まっています。
第二に、高度かつ先進的な防災体制です。非常時の災害対策本部に総会に匹敵する大きな権限を付けて、総会が開催できなくとも大災害後の復旧を迅速に可能とする仕組みを整えました。
各階に防災備品の置場がなかったので専用キャビネットを設置し、各階防災倉庫を作りました。おかげで川崎市からは「高層集合住宅の震災対策に関する整備基準」の第一号認定をいただきました。「足りない物は自分で作る」がここでも生きています。
マンションの耐震構造がわからないと防災方針も立てられません。そこで、施工社の協力を得てシミュレーションモデルを開発し、このマンションが長周期地震でも十分な耐性をもっていることを検証するなど実証科学的なワークショップも展開しています。「パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー」防災の詳細はこちらをご覧下さい。
今回はハードとソフト面の実際を紹介しました。次回は「ヒト」を中心に地域や管理会社との関係に焦点を当ててゆきましょう。
増設されたトランクルーム
【パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー管理組合~道なき道を探し求めて~】
第1回 超高層メガマンション管理組合の試行錯誤「単価250円で50年の安心を」
第2回 超高層メガマンション管理組合の試行錯誤2「足りないものは自分で作る」
第3回 超高層メガマンション管理組合の試行錯誤3「試してみることの勇気~try & error」
第4回 超高層メガマンション管理組合の試行錯誤4「こうなればいいのに」
- <神奈川県川崎市中原区>
パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー 武蔵小杉周辺で一番ノッポなビル。2009年4月の竣工で、6期目に入りました。単一棟に794戸の住宅、中原市民館、コンビニ、保育所が入居しています。左記のシンボルマークを住民公募にて定めました。「より豊かな暮らしの実現と発展を願い、空と未来に伸び行くマンションをイメージ」したものです。詳しい情報は以下の公式広報をご覧下さい。
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